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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
誰かの記憶:微睡を醒ます曙光
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早いというか、少しだけ呆れてしまいそうになる。


「皆は、大丈夫よね………」
「に゛ゃッ!? ………お、おしりが………あうぅぅ………」
「………え、だ……誰、というか、大丈夫ですか!?」
「ご、ご親切にどうも………」


 それまで誰もいなかった筈の場所に、黒エルフが落下してきた。涙目になりながら辛そうに腰をさする彼女の頭上にはしっかりとカラーカーソルが存在して、しかもモンスターを示す立派な赤。弓に剣に盾にと重装備なのだが、不思議と敵対的な印象は受けない。それどころか、痛みが引いてようやく立ち上がったあたりで「………あ、この剣と盾なんですけど少しだけお借りしてました。貴女と仲間の方の持ち物ですよね?」と装備の一部を差し出される始末だ。
 そして、それは私のアニールブレードと、ニオのタワーシールドだった。柄尻に付けた羽のストラップはリゼルが初めて作った生産アイテムだし、この盾を構えたニオには幾度となく助けられている。見間違えるなんて絶対に在り得ない。どうして彼女が装備していたのかは気に掛かるものの、害意はない相手なのだし、悪気はないのだろう。不思議と信用できるような、そんな気さえした。


「初めましてですよね。私はティルネルと申します」
「え、わ………私は、その………」
「《クーネ》さん、ですよね?」


 自己紹介を返すべきか、どうして私のプレイヤーネームを知っていたのかを問うべきか、返答を決めかねて言葉に詰まる。
 しかし、黒エルフさん――――ティルネルさんは若干狼狽えたように見えたかもしれない私を慮るように笑顔を見せる。いや、見せてくれたのだろうか。優しい人らしい。


「あ、えっと?………なんで………じゃなくて、ティルネルさんはどうしてここに………?」
「名前を知っていたのは貴女の記憶を夢で見たからです。どうしてここにいるのかという質問ですが、それについてはリンさん………いえ、とある御方に御力添えを賜ったからでして、やっぱり聞いてみないと………こういう異種族のまじないには疎いもので………」


 何らかの理由で私の記憶を知ったという事は分かった。本来なら、警戒して然るべき状況かも知れないけれど、今までこの空間に独りでいた事もあって、自分の事を知ってくれている人が傍に居てくれるのがとても心を落ち着かせてくれる。ただ、不穏な台詞も見え隠れしていたようだが………


「そうですか………ところで、私の記憶を見たって言ってたような気がしましたけど………ホントなんですか?」
「え、ええ………その、私の意思というわけではなくて、偶然見えちゃったというか………割と、細部まで………」
「細部!?具体的に何を知ってるんですか!? 何を見たんですかぁぁぁぁ!?」
「ほ、ほとんどこの浮遊城での記憶と………ふい
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