第八話:非日常への第一歩
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
境内へと全速力で走る途中、向かいから巨体が迫ってきた。
親父だ。
「来たか麟斗! 何やら面妖な事が起こっている! 炎の中から人の様な何かが現れたのだ!」
「……」
この言葉からも、何かが起こっている事だけは、確実だと言える。
……思えば俺の知らない町名が幾つか地図帳の上に存在していたり、名前が似ている上その中身まで長酷似している物と同じゲーム(何故か家でのゲームは許可されている)もあったりと、生まれ変わってから不思議な点も多かった。
もしかしなくともこの世界は、俺の知っている世界とは、まるきり違うのだろう。
「非力な楓子ではどうにもならん! 麟斗、見張っておいてくれ! できるな!」
「……」
できるな! などと自分を基準に考えないで欲しいが……まあ、元よりそのつもりで来たのだ。
詳細は分からないが、親父が焦るほどの物であるし、余程の異常事態には違いない。
というより楓子が逃げていないのは何故だ?
全速力で走ったお陰でいつもよりだいぶ早く境内へ着き、俺の目に飛び込んできた物を見て…………言葉を失ってしまった。
「我が名は『紅薔薇の剣姫』! ロザリンド=ジ=ヴァルハラン=炎皇! 数多の苦難を乗り越えて、僕は死の定めを超越したっ! 見ているか神よ! その節利を持ってしても僕の魂を戒める事などできはしないと!」
「きゃあああああっ! ロザリンド様かっこEEEEEEEEEEEEEEE!! バックに薔薇がみえりゅううぅぅうぅうぅぅぅ!」
「……」
な? 誰だって言葉を失うだろう?
馬鹿みたいな奇声を上げて、バカみたいな単語を羅列し、馬鹿みたいに踊り狂ってれば、そりゃ誰だって二の句を告げる訳が無い。
……が、問題はそこだけでは無い。一番と言っても良いぐらい、疑問且つキテレツな事態がそこに浮いている。
そう、『浮いている』。
今ロザリンドと名乗った、そして呼ばれた真っ赤な髪を持つ女は、背中からカラスの様な黒い羽根を現し、筋力や物理法則や常識を全て無視して、数メートル上で滞空しているのだ。
その様相はまるでファンタジーの如く、いや幻想物語そのもの。それが現実へと飛び出して来てしまっている。
質の悪い冗談だ、そう思いたい……だが、目の前に広がる光景が、横から高熱を叩きつけて来る火柱が、否定させてはくれない。
そして―――状況も待ってはくれない。
「アハッ、アハハハハッハハハハハッ、アハハハハハハハハハハハハハ!!」
「!」
轟々と吹き上がる火柱の中から少女の物と思わしき、しかし余りにも
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ