第八話:非日常への第一歩
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「祓い給え!」
「そうですねぇ……縁もゆかりもないのですし、別行動を取りましょう」
「浄め給え!」
「…………」
「悪! 霊! 退! 散! ハァーーッ!!」
全く持って利いていない、それどころか知らん顔だ。此方の事など意に介さない。
顔を真っ赤にしてまで塩を投げつけ続ける親父だが、如何せん何の変化も起こさないので、ただ滑稽なだけに見える。
お袋から常々聞かされていたが、ほんとうに霊的能力が無い人だ……。
それに話の内容からするに、放っておいても何処かへ行くのは分かり切っていた。だが……逃がしてはならない、と言う思いもある。
だからといって、俺に何が出来るのかといえば―――――跳んでも拳は届かず、霊的能力も薄く、何も出来ねぇ。
寧ろ利かずとも頑張っている分、親父の方がマシかもしれない。逆に論外であるバカは、親父のすぐそばで涎を垂らし続けているが。
その内、黒い羽根を持つ少女達は、笑いながら空の彼方へと消えて行った。
「いやぁーーーーーーーー待ってぇーーーーーーー!?」
悲劇のヒロインの様に楓子は青ぞらへと届かぬ手を伸ばした。……当然、俺と親父は無視をする。
「ハーッハッハッハ! ワシの浄めの力の勝利よ!」
「逃げられただけだがな……」
「何を言うかワシの勝利! 嘘では無いわ!!」
「なら目を見て行ってくれ」
「……!」ギロリ
「睨んで脅す時点で正当性は無いな」
「うぐっ……!?」
確かに恐ろしい目ではあるが、兄貴も楓子も俺にとっては怯え過ぎだ、としか言い様が無い。それに状況が状況だ、口八丁で誤魔化すならいくらでも挽回手段はある。
逆に親父は体格と風貌での脅しで会話を成立させる為、この手の正論にはそこそこ弱い。
幸い、今殴れば自分の力が役に立っていないと自ら証明すると思ったか、拳を振るう事は無かった。
ま、当たり前か。
というか、振るったら威厳もクソもないただの羆親父だからな。
「しかしワシのお祓いが利かぬとは何者だったのか……」
(自覚はあったのかよ)
「うぇええぇぇん……皆居なくなっちゃったぁ……パパの馬鹿ぁ……!」
楓子は膝をついて泣いているが、俺も少々沈んだ気分だった。それは自分の無力さと、そしてこれから起こりうる展開を頭に浮かべてしまった事にある。
なにせ、何をしでかすか分からない連中が、そして詳細も知らない連中が、この境内の外へと出て行ってしまったのだ。
クソ面倒臭ぇ事になるのは必定じゃねぇか。
「うぅぅ……みんだぁ……」
「さあ麟斗に楓子! かえって優子さんが入れてくれた茶でも飲も―――」
「いや待て!!」
「「え
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