11部分:第十一章
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第十一章
「まさか。これは」
「間違いないな」
二人は強張った顔で言い合った。
「今まさにこうして」
「はい、早百合さんはこの絵に」
「危険だ」
年配の女が言った。
「このままでは早百合さんは今にでも絵に」
「そうですね。そしてそれを行っているのは」
「探すぞ」
年配の女の決断は迅速だった。
「すぐにだ。いいな」
「はい」
二人はそれに頷きすぐにその部屋を出た。二人が前から消えてもまだその絵は一人でに描かれ続けていた。そこにいる早百合は間も無く本人になろうとしていた。
二人は遮二無二部屋を開けて回って探した。そうして遂にある部屋を探し出した。そこにいたのは。
まず早百合がいた。彼女はあの振袖姿のまま静かに座っている。だがそこでまるで人形のように強張りそうして微動だにしなかった。その彼女の前にいるのは。
一人の老人だった。一見温和そうだがその目は血走り真っ赤になっている。その目で今描いているその絵と早百合を見つつ。不気味、いや凄惨な笑みを浮かべていた。
「もうすぐだ。もうすぐ」
彼はその絵を描きながらその笑みと共に言っていた。
「もうすぐでこの絵も完成する。そうすればわしはまた」
「何のつもりかわからないがな」
「それ以上描いてもらうわけにはいかない」
ここで二人は彼に対して言った。
「止めてもらうぜ」
「大島画伯だな」
「その通りだが」
その言葉に気付いた彼は二人に顔を向けて答えてきた。
「誰だ?」
「誰か?そうだな」
若い女は画伯の声に応えて不敵に笑ってみせた。
「正義の味方さ」
「正義の味方だと?」
「ああ、覚悟しな」
彼女は言いながら己の着物を派手に脱ぎ捨てた。そしてその素顔を画伯に対して見せるのだった。
「名前は相模逸郎っていうのさ」
「彼は私の助手だ」
もう一人、年配の女もまたここで着物を脱ぎ捨て本来の顔を見せてきた。
「私の名前は間三郎という」
「間三郎に相模逸郎か」
「まあ知らないだろうな」
「その通りだ」
二人の問いを聞いても冷淡なままの画伯であった。
「それで何の様だ」
「何の様もこんな様もなくてな」
相模はその冷淡な画伯に対してまた告げた。
「あんたの絵はもう描かせるわけにはいかないんだよ」
「そして今まで失踪、いや捉えている女性達を解放してもらう」
間もまた言うのだった。
「必ずな」
「生憎だがそうはいかん」
画伯はきっぱりと二人の言葉を断るのだった。
「それはな」
「解放しないっていうのかね、この期に及んで」
「全てはわしの芸術なのじゃ」
その血走った目で語る画伯だった。
「全ての美貌をわしの芸術に封じる為にな。それはならん」
「まあ話し合いで解決できるとは思っちゃいないがね」
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