アインクラッド 後編
圏内事件 4
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死亡表記はこうなってた。《サクラの月22日、18時27分》。その日時がアインクラッドに訪れたのは、昨日で二度目なんだ」
「あっ……!」
軽く笑いながらキリトが説明すると、二人は目を丸くして驚き、しばし言葉を失ってから、先ほどのマサキと同じように、深く息を吐き出した。
「そっか、去年なんだ。去年の同じ時間に、Kのほうのカインズさんが、全く関係なく死亡してた……」
エミの言葉に、キリトが頷く。
「ああ。恐らくは、そこが《計画》の出発点だったんだ」
そして、一度深く深呼吸する。
そこからの推論は、別段難しいことではなかった。ヨルコ、カインズの二人は、恐らくかなり以前に同じくカインズと読める誰かが貫通属性ダメージで死亡したことに気付いていた。そしてある時、それを使えば《圏内殺人》などというあり得ない、否、あり得てはいけない事件を偽装できると考え付いた。二人はそれを実行に移し、自分たちが疑われうる立場であることを利用して《指輪事件》の犯人を炙り出そうとした。そしてその結果、恐怖に駆られたシュミットが罠にかかった。
そのシュミットは、恐らく今、《黄金林檎》リーダーの墓に向かい、許しを乞おうとしていることだろう。その墓が圏外にあった場合、二人が今度こそシュミットを殺さないか、もしくは逆にシュミットが口封じのために二人を殺さないかという心配もあったが、その場合どちらにしてもマサキたちにそのことが知られてしまう。シュミットは自分が人殺しの汚名を着せられて攻略組を追い出されることに耐えられないだろうし、ヨルコはそもそも殺すつもりならばエミたちとフレンドを結んでいない。だから、殺しはしないだろう……そう、結論付けた。
「……後は、彼らに任せよう。俺たちの、この事件での役回りは、もう終わりだよ。まんまとヨルコさんたちの目論見どおりに動いちゃったけど、でも……俺は嫌な気分じゃないよ」
静かに、安堵した声色でキリトがいう。同じく緊張の解れた声でアスナが頷くのを横目に、マサキは椅子に深く腰を下ろした。
墓、か……。
マサキの頭に、一つの景色が思い浮かんだ。
小高い丘。
頂上に伸びる、一本の針葉樹。
青い空。
夕焼け空。
夏の芝生。
冬の雪景色。
雲。
雨。
何度も、何度も足を運んだ場所。
また、花を供えに行かなければ……そんな思いをひっそりと抱えながら、マサキはもう一度深く息を吐いた。
まだ真相の半分にも辿り着いていないなどとは、露ほども思わずに。
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