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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
圏内事件 4
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がら、ポーションの小瓶を一本取り出すと、空中でそれを手放した。当然ながら小瓶は仮想の重力に従って自由落下を始め、そして床に衝突したところで衝撃に耐えられず粉々に。直後、ポリゴンの欠片を振り撒きながら青い光を放って消滅する。

「あっ……」

 思わず、エミとアスナが息を呑む。

「ヨルコとカインズは、このエフェクトを再現するために自分の衣服、あるいは鎧を利用した。そして『死亡エフェクトに良く似たエフェクト』に紛れ、本人はまんまと結晶でテレポートした。そういうことだな?」
「ああ。昨日、教会の窓から宙吊りになったカインズ氏は、空中の一点をピッタリ凝視してた。俺たちはそれを、自分のHPバーだと思ってたけど、そうじゃなかった。カインズ氏が見ていたのは、自分の着込んでいたフルプレートアーマーの耐久値だったんだ」
「ヨルコの時は、恐らく俺たちから連絡が来てすぐに圏外まで走り、そこでダガーを背中に刺して来たんだろう。そして、服と髪でカモフラージュしつつ何食わぬ顔で俺たちを出迎えた。……後は、耐久値が尽きるタイミングで窓まで後ろ向きで歩き、適当な効果音と共に振り向いて俺たちにダガーを見せ、窓の外に落下すればいい。あの落下は、俺たちにテレポートのコマンドを聞かれることを防ぐためでもあったんだろうな。……だが、まだ一つ腑に落ちん。生命の碑には確かにカインズの名前に横線が引かれていた。そのトリックは何なんだ?」

 マサキが尋ねると、キリトがニヤリと笑って答える。

「マサキ、そのカインズさんの名前の表記、覚えてるか?」
「ああ。《Kains》だ」
「そう。ヨルコさんはそう言ってた。けど……ほら、これ」

 キリトは手に持っていた一枚の羊皮紙片を差し出してきた。それを受け取り、エミ、アスナと共に目を通す。
 その紙は、先ほどシュミットに書かせた、ギルド《黄金林檎》のメンバー一覧表。そしてその名前の一つが目に入った途端、隣の女子二人が驚きで叫んだのと同時にマサキは盛大に溜息を吐いた。――その視線の先には、「Caynz」の名前。

「つまり、赤の他人だったってわけか」
「一文字くらいならともかく、三文字も違えばシュミットの記憶違いってこともなさそうだしな。つまりヨルコさんが、俺たちにわざと違うスペリングを教えたんだ。Kのほうのカインズ氏の死亡表記を、Cのカインズ氏と誤認させるためにね」
「え、でも……ちょっと待って?」

 不意にエミが眉をひそめ、声のトーンを落とす。

「ってことは、Cのカインズさんが死亡した時、Kのカインズさんもどこかで死亡してた……ってこと?」
「偶然……じゃないわよね。まさか……」
「ああ、ちがうちがう。ヨルコさんたちの共犯者が、タイミングを合わせてKのほうを殺した、ってことじゃない。いいかい、生命の碑の
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