アインクラッド 後編
圏内事件 4
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の知れない暗殺者に狙われている可能性があり、そして殺されることを恐れていた。服を何枚も重ね着し、防御力を最大限確保しようとするくらいにな。窓とカーテンを閉め切り、布団の中で丸まっているくらいの行動を取ってもおかしくはないくらいの状況だ。……にも関わらず、彼女は豪胆なことに窓を開け放ち、カーテンすら引いていなかった。一体何故だ?」
そこまでマサキが語ると、呆けていた三人の顔が一斉に引き締まった。必死に考えているのだろう、真剣な表情だ。
「あの時、ヨルコさんが一番警戒していたのはシュミットさんだったはず。だから、シュミットさんが暗殺者だった場合に備えて、脱出経路を作っておいたとか?」
「だとしたら、ロープの一本や二本の備えがあってもいいんじゃないか。圏内である以上落下ダメージの心配はないが、受身を取り損なえば酩酊感で動けなくなる」
「それは……でも、寝不足で、しかも強い恐怖に晒されていたヨルコさんに、そこまで考えが巡らせられるかしら?」
「……なら、窓のことは一度保留にしよう。疑問点はもう一つある」
そう言って、マサキは立ち上がった。事件発生当時を再現するように、北側の壁まで歩いて中央を向く。
「ヨルコは窓際で何者かから攻撃を受けた。異変に気付いた俺たちが向かうも間に合わず、窓の外に落下」
そして、自分自身の記憶と照らし合わせるように窓際まで歩き、下を走る往来に目を落とす。
「そして俺とキリトが、遠くの屋根の上に犯人と思われる黒ローブを発見した。……ここで二つ目だ。キリト。最初にカインズが殺された時、犯人と思しき人物は確認できなかった。そうだな?」
「あ、ああ……。教会には誰もいなかったし、俺の《索敵》スキルでも確認できなかった」
「でも、ヨルコさんは「カインズの後ろに人影を見た」って言ってたわ」
「その証言を真実だと仮定して考えると、その時犯人は完全な『透明人間』となって現場から逃亡したことになる。スキルかアイテムか、あるいは何かのミスリードか……それは分からないが、そんな手段が存在するとして、何故ヨルコ殺害時にも使わなかった? それを使えば、何の痕跡すら残さずにその場を後にできたはずだ。だが現実には犯人はその方法を選択せず、結果として俺たちに背格好というヒントを与えることになった」
窓枠に腰掛けたマサキが、そこで一旦話を区切る。そして、視線を投げてくるキリトたちを見回してから、彼らに向けて指を二本立てて見せた。
「――となれば、考えられる理由は二つ。突発的な理由以外でそのトリックが使えなくなった。もしくは、『俺たちに姿を見られること』それ自体が目的、あるいは目的の一部だった」
「目的、って……?」
エミが問いかけると、マサキは再び思案しながら答えた。
「それは分からん。が、可
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