アインクラッド 後編
圏内事件 4
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
る。
窓際に並べた椅子に深く腰掛けたマサキが見下ろす先では、数人のグループが一組、酒場に入っていったところだった。先ほどのローブと背格好が違っていたため見逃したが、もし似つかわしい人物を見つけた場合は、キリトがデュエル申請で名前を確かめる算段になっている。明らかな非マナー行為であるし、相手がデュエルを受け入れる場合もある。とても得策と言えるものではないが、かと言って他に策がないのも確かだ。
しかし、マサキが思考を巡らせていたのは別のことだった。
――何かがおかしい。高速回転を続けるマサキの脳で、僅かな引っ掛かりが棘のように何処かに刺さり、そこでシグナルを発し続けていた。それが一体何なのか。それを確かめるべく、マサキはヨルコ殺害の一部始終を繰り返し頭の中で再生する。と、眼前の窓に、横から差し出されたらしいブラウンの物体が映し出された。マサキが視線を胸の前に落とすと、それが野菜や肉がたっぷりと挟まれたバケットであると分かった。
「アスナが作っててくれたんだって。もう耐久値が切れちゃうみたいだから、早めに食べて」
「……ああ」
マサキは差し出されたバケットを手に取り、機械的な動作で口に運ぶ。ちらりと横を伺うと、何が楽しいのか、にこにこと笑ってこちらを見ているエミの向こうで、キリトがまた地雷を踏み抜いたらしく閃光様の折檻を喰らっていた。
再び思考に没頭するマサキ。
しかし、今度は今までほど集中できなかった。バケットの味が良かったからでも、怒られて恐縮するキリトの様が愉快だったからでもない。その前、差し出されたバケットを映した窓が、何故か頭から離れなかったのだ。
「今日ダメだったら、明日は私が何か作ってこようかなぁ……。マサキ君は、何かリクエストとかある?」
「窓……」
「え、窓?」
窓。そのワードに着目しつつ、もう一度事件の一部始終をリプレイ。開いていた部屋の窓。スローイングダガーはそこから飛来し、ヨルコはそこから落下。そして、その向こう側に黒ローブ……引っかかったのは、一連の出来事が窓の近くで起きたから? ――いや、違う。だとしたら……待てよ? 何故あの時、あの窓は……
「ちょっと、マサキ君? 聞いてる?」
マサキの顔を、エミが覗き込んでくる。マサキが僅かに視線を下げ、焦点を合わせた。――目の前に現れたエミの顔ではなく、窓に映ったその後ろ頭に。
「何故……あの部屋の窓は開いていた?」
その言葉は、独り言というには十分すぎるボリュームを持っていた。エミだけでなく、キリトとアスナまでが反応してマサキに顔を向け、そして意味が分からないというように二人で見合わせた。
「いや、何でって……」
「あの時ヨルコは命を何者か……それもアンチクリミナルコードの無力化なんて芸当のできる、得体
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ