アインクラッド 後編
圏内事件 4
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いシルエットにマサキが注目した途端、ディティール・フォーカシングシステムが作動してその姿を克明に浮かび上がらせる。
全身を包む黒いフーデッドロープ。風が吹くたびにその裾がはためくが、人相はおろか顔の輪郭さえぼんやりとしか見えない。
「……っ!」
死神――脳裏で二つのシルエットが交錯した。その瞬間、マサキは半ば無意識に窓枠を蹴飛ばすと、道を挟んだ向かい側の屋根まで跳躍した。
「野郎っ……!!」
続いて、キリトも同じくジャンプ。敏捷値の差で僅かに飛距離が足りなかったものの、逆にマサキにはない筋力補正を生かして屋根の縁を掴むと、一息に身体を持ち上げてよじ登る。
「マサキ君!」
「キリト君、だめよ!」
鋭い制止の声。理由は明らかだった。奴から攻撃を喰らえば、キリトはたった一撃で死ぬかもしれないのだから。
蒼風の柄にかけたマサキの右手が微かに硬直する。
「……キリト」
「大丈夫だ。行くぞ!」
キリトはマサキの掛けた声を拒むように背中から剣を引き抜くと、奥歯を軋ませながら駆け出した。
それに引き摺られるようにして、マサキが後を追う。斜め後ろから覗くキリトの横顔は、後悔と、そして怒りで引きつっていた。
目を伏せ、蒼風を握り締める。
手の中に、柄の感触。
それはあっけなく鞘から放たれた。
人を殺める得物にしては、軽すぎるくらいに。
切れ長の目が更に細められ、
マサキは正面を見据える。
漆黒のローブただ一人が、瞳の中に立っていた。
「挟み込む。そのまま走れ!」
マサキは目を逸らすことなく指示すると、キリトと同じ程度に抑えていたスピードを一気に限界まで加速させた。キリトを追い抜くと同時に屋根を蹴り上げ、十メートル弱はあろうかという往来を易々と飛び越えて向かい側の屋根に着地。下のプレイヤーから自分の姿が見えにくくなる程度に身をかがめ、意識を集中、黒ローブの立っているより数百メートル後方の屋根と、そこに立っているマサキ自身を頭の中に描き出す。――次の瞬間、マサキの身体は思い描いた通りの場所に移っていた。
ローブの男はマサキを探すように数度首を振った後、振り返ってようやくこちらを視認した。相変わらず顔は殆ど見えなかったが、心なしか驚いているようにも見える。
その間にもマサキとキリトは猛スピードで屋根から屋根へと飛び移り、黒ローブとの距離と確実に縮めていく。しかし、黒ローブは二人の相手などするつもりはないと言わんばかりに微動だにしない。その間にも彼我の距離はみるみるうちに縮まっていき、やがてマサキが向こうから数えて二つ目の屋根に飛び移ろうとした、その時。黒ローブは緩慢な動作でキリトとマサキを交互に見やると、やおら懐に手を差し込んだ。刹那、マサキの脳が回転数を急速に高
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