第十五話 恐れを抱く者
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げられた顔に見えたのは今までに見たことのない幼い笑顔。
言葉通り、本当に嬉しいのが伝わってくる。
ドキン、と心臓が跳ね上がり、顔が赤く染まる。
それを悟られたくなくて急いでベッドへ戻りあらぬ方向を向いた。
シリカの所作に苦笑しつつ、リュウヤは立ち上がって言った。
「さて、もうそろそろ前線に戻らないとな。五日も離れてるし」
「…………あ……」
その言葉に、さっきとは違う意味で心臓が跳ねる。もう行っちゃうのか、と。
しかし、連れて行ってください、とは言えなかった。
今の最前線は五十五層。そんなところへついていっても早晩この世から消えてしまうだけだ。もし生き残れたとしても、リュウヤの足手まといにしかならない。
最前線で生き抜く者、中層で生活を営む者。
同じゲームにログインしていながら、二人には高く分厚い壁がそびえ立ち、二人の距離を離していた。
「…………あ、あたし……」
抑え切れそうにない言葉を必死になって飲み込む。しかしそれは、雫となってシリカの目からこぼれ落ちた。
その雫を拭ったのは、他でもないリュウヤだった。あふれ出そうになる涙を目尻に溜めているシリカへリュウヤは優しく微笑んだ。
「大丈夫、心配するな。別に二度と会えないワケじゃない。そうだろ?」
リュウヤの言う通り、今生の別れというワケではない。けれどそうではない、そういうことではないのだ。
「でも、でも……」
子どもの癇癪のように反論するシリカにリュウヤ頭を撫でる。
「それに、俺とシリカには約束があったろ?」
ん?と尋ねられ、思い出す。
《白蛇》と呼ばれるプレイヤーと会うこと、加えてその人みたいな短剣使いになること。その夢を手助けする。
そんなことを、道中リュウヤは言ってくれていた。
「ひとつは簡単に叶えられるが、もうひとつはそうはいかない。長期間の時間が必要だ。だから、週に一度か二度と、俺んとこへ来い。稽古つけるからさ、な?」
それで泣きやんでくれないか、と優しく言うリュウヤに一度小さくこくりとうなずき、もう一度大きくうなずいた。
よし、とニカっと笑ったリュウヤは背筋を伸ばし、シリカへ手を差し出した。
「ほら、諸々の話は後だ。とりあえず先に、ピナ生き返らせないとな」
「はい…………はいっ!」
今度は臆すことなくリュウヤの手を掴んだシリカは目尻に溜まった涙を振り落とし立ち上がった。
今はもう、これ以上望まないーーー、張り裂けそうな、しかし暖かく感じる胸を抑えながら、シリカはメニューウインドウを開けた。
そのままアイテム欄へ移動、スクロールして《ピナの心》を実体化させる。
それを机にそっと置き、今度は《プネウマの花》を実体化させた。
「そ
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