第十五話 恐れを抱く者
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な……怖いわな」
どうやら自分の顔に恐怖が色濃く映し出されていたらしい。離れていた時はそうでもなかったけれど、近くに来ると確かに怖い。
彼は否定していたけれど、目の前にいるのは恐怖の象徴とまで言われるあの《鬼》かもしれないのだ。
ーーーだけど。
帰っていくリュウヤの手を握り、シリカはぐっと引き寄せた。
その行動に目をパチパチと瞬かせ呆気に取られているリュウヤへ、シリカは勇気を振り絞り笑みを浮かべた。
「手を貸してくれませんか?動けそうにもないんです」
声は若干震えている。裏返った声に聞こえそうだ。けれど、でき得る限りチャーミングに笑ってみせる。
リュウヤはシリカの手を引っ張って軽く宙に浮かせると、器用に背中に乗せて頬を緩ませた。
「合点!おまかせあれ、お嬢さん!」
三十五層にある風見鶏亭へ帰る途中、二人は終始無言だった。
言いたいこと、聞きたいこと、山ほどあるのに、部屋へ着くまで、ついぞ口が開くことはなかった。
リュウヤの部屋へ着くと、もう窓から夕日の赤い日差しが入り込んできていた。おんぶしていたシリカをベッドの端に座らせたリュウヤはーーー即座に土下座した。
「本当にすまなかったっ!」
誠心誠意の謝罪を述べた。
「シリカを囮のようにしてしまったこと、俺自身のことを黙っていたこと、そんでシリカを怖がらせたこと、この通り、伏して謝るっ!」
「そ、そんな……顔を上げてください。リュウヤさんなにも悪くないです」
「いや、こればかりは謝らせてくれ。今回のことは完全に俺が悪い」
違うと反論すると、リュウヤは絶対にそれを認めないだろう。
これじゃあ昨夜の繰り返しだ。
そう思い、シリカはベッドから降り、リュウヤに合わせてしゃがみ込んだ。
「リュウヤさん、いいですよ。もう頭を上げてください。そうしたらこれでなかったことにしましょう」
結果的になんでもなかったんですから、と微笑みかけるが、リュウヤは一向に頭を上げようとはしない。
もう一度訴えようとする前にリュウヤは言った。
「俺は、お前らの言う《鬼》だ。それでも、いいのか」
ビクリと体が震えた。盗賊たち相手に聞かせた冷たい声。
しかしシリカはふるふると顔を横に振った。
「リュウヤさんがどんな人であろうと、あたしを助けてくれたことに変わりはありません。だからもう顔を上げてください」
そんな「些細な」ことなど、どうでもいい。
たとえ誰かが言ったウソの話であろうと、本当のことだとしても、リュウヤの優しさを知っているから。
キザな言葉で良心を包んで見せようとしないリュウヤを、知っているから。
「そう言ってくれると、本当に嬉しい」
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