第十五話 恐れを抱く者
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時間がかかるんじゃーーー。
とシリカが思考していると、リュウヤはただ、とつけ加えた。
「逃げた場合、地獄への片道キップを強制的に使用させますので、ご注意を」
盗賊たちの動きが一気に止まる。口を開きかけていたある男は静かに口を閉じ、転移結晶を持っていたある男はその手からするりと結晶を落とす。
誰だって、生きるか死ぬかと問われたら生きたいだろう。まして、リュウヤを相手にすれば殺されるのは分かっている。
そんな彼らの様子を見て満足したのか、リュウヤは回廊結晶を掲げ「コリドー・オープン」と唱え、結晶を砕く。
誰も強がりなど言えず、リュウヤを取り囲んでいた男たちは悔しそうに罵詈雑言を吐きながら次々に開かれた回廊へ入っていく。
盗聴していたグリーンプレイヤーもそれに続き、残ったのはロザリアのみ。
彼女はその場で不動の構えを見せていた。しかし強がりをみせても本心は隠せないのか、カタカタと小さく震える手で槍をかまえている。
「……やりたきゃ、殺ってみな。グリーンのアタシを傷つけたら、今度はあんたがオレンジにーーー」
言葉が終わらないうちにリュウヤが動いた。ぶん、という音を残した彼は、いつの間にかロザリアの後ろに立っていた。
「残念、俺にその手は効かないんだなぁ」
「えっ、なんで……?」
そう声をもらしたロザリア。理由は明白、彼女のカーソルが禍々しいオレンジへと変貌しているのだ。
ロザリアは気づかなかったが、遠くからリュウヤのHPカーソルを見ていたシリカは分かった。
どんな手法かはわからないが、一瞬リュウヤのHPが減り、それがロザリアの攻撃と見なされたのだろう。
「さ、お前も牢屋に行ってもらうよん」
リュウヤはロザリアの襟首を掴みズルズルと回廊まで引きずっていく。
「ちょ、ちょっと!やめてよ!許して!ねえ!……そうだ、あんた、アタシと組まない?あんたのその実力があればどんなギルドだってーーー」
回廊手前、反抗するロザリアの襟首を掴み上げ、リュウヤが心胆が凍えるほどの声で言った。
「失せろ、二度と俺の前に面みせんな」
その言葉が彼女に届いたかは分からない。リュウヤはロザリアを力任せに頭から放り込んだのだ。
ロザリアが回廊に消えていったのと同時、回廊そのものも一瞬眩く光ってその場から消滅した。
訪れる静寂。
麗らかな春を感じさせる小鳥のさえずりと小川のせせらぎが、数分前の喧騒がウソのように思わせる。
盗賊が消えた安堵、リュウヤの恐ろしげな正体、その他もろもろの感情が混み合ってシリカは口を開くことができなかった。
そんなシリカに、近寄ってきたリュウヤが手をさし伸べる。しかし、その手はピクリと震えリュウヤの元へ帰っていく。
「そう、だよ
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