第十五話 恐れを抱く者
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目が、笑ってないのだ。
それは隣にいるシリカだけが感じられるほどごくわずかな違い。
しかし現実に冷気を感じられるほどに冷たい。
ゾクリと体が反応する。
「ってことは、アンタは正義感ってやつでここまで来たわけ?」
ロザリアの質問に笑みで答えるだけ。
その反応を肯定ととったのか、ロザリアはハンッと鼻で笑った。
「何よ、マジんなっちゃって、馬鹿みたい。ここで人殺したってホントにその人が死ぬ証拠なんてないじゃない。仮にそうだとしても現実に戻った時罪になるわけでもなし。それにここから出られるかも分かんないのにさ、正義とか法律とか、笑っちゃうわよ。アタシそういうやつが一番嫌い。この世界に妙な理屈持ち込むやつがね」
ロザリアの主張に、シリカは昨日のリュウヤとの会話が頭を掠めた。
ここは立派な現実。
やること全てが当人の本性を浮き彫りにする。
けれど、それだけではないような気がした。特に目の前にいる彼女は、言葉を聞く限り現実逃避をしているように感じるのだ。
彼女の言を聞き、リュウヤがどう応えるのかと彼を見やるとーーー笑みが、嘲笑が浮かび上がっていた。
「お前のくっだらねぇ主義主張はわかった。けどーーー」
「誰が正義づらでここに立ってると言った?」
ーーーゾクッッッッッ!
今度こそ、背中に強烈な悪寒が走る。
それはなにも隣にいたシリカだけではない。遠くに離れているロザリアでさえ身構えたほどの悪寒。
しかし虚勢を張るように、ロザリアの瞳に怯みが混ざった凶暴な光が宿る。
「ふ、ふん、粋がるんじゃないわよ。あんたの撒いた餌に釣られたのは認める。けど……たった二人でどうにかなるとでも思ってんの……?」
嗜虐的な笑みを刻むロザリアの右手が、素早く二度宙を扇いだ。
途端、向こう岸の木々からガサガサと音をだしながら人影が吐き出される。
シリカの視界に入ったそれらにあるカーソルはほとんどが禍々しいオレンジを輝かせている。
その数ーーー十。
もしリュウヤが気づかなければあっという間に囲まれていたであろう人数だ。
その中に一人、グリーンカーソルを持つプレイヤーがいた。その人は昨日盗聴していた人物その人だ。
新たに出現した盗賊たちの出で立ちはかなり派手なものだ。ジャラジャラとアクセサリを身につけ、華美な装飾がついた武器を持つ。
ニタニタと顔を歪ませる盗賊たちは皆男だ。当然、シリカの体を舐め回すような視線を送る。
気持ちが悪くてリュウヤの後ろに隠れ、リュウヤにしがみつく。くいくいと袖を引っ張って小声で囁きかけた。
「リュウヤさん……数が多すぎます。脱出しないと……」
「だ〜い丈夫だって。結晶持って待機してろ。ヤバくな
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