第十五話 恐れを抱く者
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モンスターと出くわすこともないまま駆け下りるように進み、ほどなくして麓に到達した二人。
あとは街道を一時間歩くだけ、それでまたピナに会えるーーー。
弾む胸を抑えながら、小川にかかる橋を渡ろうとした時。
不意に後ろからリュウヤの手が肩にかけられた。どきんとして振り返ると、リュウヤは笑みを浮かべていた。
「どうやら、お客さんのようだ」
リュウヤはシリカの顔は見ず、橋の向こう、繁る木立の方をじっと睨んでいる。
「どういう、ことですか?」
「待ち伏せ。そこの木の陰にいる。おーい、バレてっからさー、さっさと出てこーい」
「え……!?」
慌ててリュウヤの言う木立へと視線を向ける。しかし、シリカの目には街道と木々が見えるだけで、人影なんてものはない。
緊迫した数秒ののち、木の葉ががさりと音を立てて揺れ、一人の女性が出てきた。
カーソルの色はグリーン。犯罪者ではないようだ。
現れたのはーーー驚くことにシリカの見知った顔だった。
炎のように真っ赤な髪、同じく赤い唇、エナメル状に輝く黒いレザーアーマーを装備し、片手には細身の十字槍を携えている。
「ろ……ロザリアさん……!?なんでこんなところに……!?」
瞠目するシリカの問いに返答はない。代わりにロザリアは唇の片側を吊り上げて笑った。
「アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、お兄サン。あなどったかしら?」
そこでようやくシリカに視線を向ける。
「その様子だと、首尾よく《プネウマの花》をゲットできたみたいね。おめでと、シリカちゃん」
言葉だけみれば褒められているのだろう。しかし、シリカは数歩後ずさった。なにとは言えないが、強烈な嫌な予感を感じた。
そしてその予感は的中する。
「じゃ、さっそくその花、渡してちょうだい」
「な、なにを言って……」
その時、会話から放り出されていたリュウヤが減らず口を携えて口を開いた。
「はぁいはい、そんな簡単にやるわけないでしょ。つか俺のこと無視しないで、寂しいから」
よよよ、と泣くフリをするリュウヤ。
どう突っ込もうかシリカが迷っていると、リュウヤはフリを解いて話を続けた。
「まあなに、人のもの欲しがるのは子どもまでにしときなさいなロザリアさんよ。いやーーーオレンジギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、と言った方が良かったかな?」
リュウヤが笑みをたたえるのとは対照的に、ロザリアの笑みが消える。
オレンジギルドとは、オレンジプレイヤー、つまりは犯罪者プレイヤーたちが集う集団のこと。ーーーという知識は持っていたシリカだが、実際に目にするのはこの時が初めてだ。
しかし、
「で、でもリュウヤ
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