第十四話 見られたくないもの・聞かれたくないもの
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真ん中の白い岩の上に……こらこら、話は最後まで聞きなさいな」
リュウヤの注意はもうシリカの耳には届かない。リュウヤが言い切る前にシリカは走り出していた。それを特段咎めるつもりもないリュウヤは苦笑しながらシリカの後を追う。
はやる気持ちが抑えきれず、駆け出したシリカは言われた岩の上をのぞき込む。
「……ない、ないよ。ないよリュウヤさん!」
だが、そこには背の低い糸のような草が生えているだけで、それらしき花はどこにもなかった。
シリカはどうしようもなく叫ぶ。振り向いた先にいたリュウヤの姿がぼやける。じわりと涙が目に滲んでいる。
「んなわけ……おいおい、あるじゃん。よく見てみ」
寄ってきてのぞき込もうとしたリュウヤはその動作を止め、シリカの涙を拭ってやる。
言われてもう一度見ると、そこには神秘的な光景があった。
普通ではありえないスピードで成長する一本の植物。
双葉をつけた芽は徐々に背丈を伸ばしていき、蕾をつける。膨らんだ蕾は薄白く発光し、次第に開いていく。
ほころびながら開く様は美しく、つい見とれてしまう。そして咲いた花はしゃらん、と鈴のような音色を奏で、八枚の白い花弁をつけ神々しさを見せつける。
その様子を少しの間二人は息もせず見守っていた。
これを取っていいのかな、と思ってしまうシリカは隣にいるリュウヤへ確認するような目線を送った。
そのリュウヤは口角を上げ黙ってうなずいた。
壊れ物を扱うかのようにそっと花に触れる。それだけで茎の中程から下が砕け、シリカの手に光をともす花だけが残った。
音もなく、ネームウインドウが開く。
アイテム名ーーー《プネウマの花》
「その花に溜まってる雫を心アイテムにかけてやれば、ピナは生き返る。けど、ここらはモンスターが強いからな。帰ってからにしな」
「はい……、ハイ……!」
ようやく、ピナを生き返らせることができる。そう思うと自然と笑みがこぼれた。
メインウインドウを開き、花をアイテム欄に格納させる。確認を終えた後、それを閉じた。
正直、転移結晶を使いさっさと街に戻りたい。しかし、大変高価である結晶は緊急時のみに使用するべきアイテムだ。我慢して歩いて帰る他ない。
リュウヤと連れだって帰り道を歩く際中、モンスターが出現することはあまりなかった。あったとしても一体で襲いかかってくる程度。
行きよりはるかに早いペースで帰る道のりで、ピナが生き返るという確信を持ったからか、今まで深く考えなかったことに思考が回る。
例えばーーー
「あの、リュウヤさん。聞きたいことがあるんですけど」
「ん〜?なになに?」
「そのリングネックレスって、いったいどんなものなんですか?」
戦闘用の装備では窮屈だと
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