第十四話 見られたくないもの・聞かれたくないもの
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《白蛇》の通り名で知られてると思うんですけど……、リュウヤさん?どうかしました?」
見るとリュウヤはほほを引きつらせている。だがそれも一瞬、すぐに表情は元に戻った。
「なんでもない。……で、そいつがどうかしたのか?」
「その人、ソロで中層から攻略組に入った人なんですよ!しかもすっごく美人で!……でも、ある日を境にして攻略組から去ったって聞いて、もしかしたら上の階層の人で誰か知っている人がいないかと思って」
「はぁ……《白蛇》ねぇ。確かにいたよ、そんなヤツ。……なんだ、探してるのか、そいつを」
「必死になって探してるわけじゃないんですけどね。でも、その人は一度あたしを助けてくれた命の恩人なんです。あたしが短剣を使おうと思ったのもその人に憧れて、なんです」
シリカは目をキラキラさせながら遠いどこかを見つめている。そこには《白蛇》の名で通った美人が映し出されているんだろう。
「いつか、あの人みたいな短剣使いになれるのと、あの人と会うのが、今のあたしの夢です」
「そっか……」
隣で夢を語るシリカに、リュウヤは微笑みを浮かべる。
デスゲームと化したこの仮想世界で前向きに、ましてや夢を語る強さを持つものなどそうそう居はしない。
それを分かっているリュウヤは、小さく口角を上げた。
「そんじゃ、その夢、このお兄さんが少し手伝ってやろう」
「え?」
「なぁに、心配すんなって。短剣の扱いなら俺の守備範囲内だ。任せろ」
ぽんぽん、と頭を撫でるリュウヤの手はどこか、シリカにはいるはずもない兄のような手をしているような気がした。
結果からして、リュウヤの短剣の手解きはシリカのプレイヤースキルを遥かに向上させていた。
その証拠は、《思い出の丘》に入ったところから敵のエンカウント率が高くなり、前までのシリカならすぐにばてていたであろう戦闘数も楽にこなせていたことから伺える。
それはひとえにリュウヤの教えのおかげである。最小限の動きで攻撃、防御、回避のやり方を教わり、それを教えるのも上手い。
実際に一度手本を示してくれるのでやり方も想像がつきやすかった。
別れ道の無い一本道を歩き、襲ってくるモンスターたちを退け続け、小高い丘を登っていく。高く繁った木立の連なりをくぐるとーーーそこが丘の頂上だった。
「うわあ……!」
この層に来て二度目の衝撃。思わず歓声が口から飛び出す。
木々の連なりの中にぽっかりと開いた空間。そこに広がる花々が幻想的な感覚を思い起こさせる。
空中に浮かぶ花畑。頭の中でそんな言葉が浮かんだ。
「ご到着ですね、お嬢さん」
腰に手をあて、力を抜くようにふっと笑うリュウヤ。
「ここに……その、花が……」
「えっとな〜、確か
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