第十四話 見られたくないもの・聞かれたくないもの
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リュウヤにシリカは隣に並んでついていく。
なにも言えなかった。返事をすること以外、なにも。彼のものを言わせぬ表情。口調はなんら変わらないはずなのに、普段との差が垣間見えた表情にはやりきれない何かが宿っていたように見えた。
だが、シリカにその感情を特定することはできない。ましてや彼にそのことを言えるはずもない。
だからシリカは密かに決意する。
昨日みたいにパニックに陥るような真似はしない。全力で挑むんだ、と。
ーーーしかし、
「ぎゃ、ぎゃあああああ!? なにこれーーー!? き、気持ちワルーーー!!」
それは一瞬にして崩れ去った。
門を抜け、数分歩いたところで早速モンスターとエンカウント。
「や、やあああ!! 来ないでーーー」
出現したソレは、シリカの想像の遥か上を行く。一言で表せば《歩く花》。
しかし、そんな奇異な物体がキレイに思えるわけもなく、キレイに作られているわけもない。
胴となる太い茎から緑色のツタが何本も生え、顔と思われる中央の花には牙を生やした大きな口がパックリと開いていて、その中に見える毒々しい赤をさらけ出している。
攻撃部位はツタに生えるトゲやツタそのものらしいが、シリカにそんな冷静な思考ができるはずもなく、それを分かっているのか人食い花はニタニタと醜悪な笑みを浮かべながらシリカに近づいていく。
先ほど、広場で見たシリカの興奮度合いを思えば嫌悪感を抱くのは当然だなとリュウヤは面白そうに後ろから見ている。
「やだってばーーー」
「あのなぁ、そんなメチャクチャに短剣振ってたってダメージなんか入んねえぞ〜?」
「だ、だって〜……」
「それにそんなので嫌々言ってたらこの先持たないよ、君。花がいくつもついてるやつとか、食虫植物みたいなやつとか、年齢制限的にアリなのかって疑うくらいヌルヌルの触手持ってるやつとか出てくるんだよ?」
「キエーーー!!」
見ることはおろか、聞くだけでもキツイシリカは、ついに耐えきれず目をつむりながらソードスキルを放つ。もちろん空振りに終わり硬直が身体を襲う。
その隙を狙ってツタがシリカの足元に這い寄り、シリカを持ち上げた。
「わ!?」
視界が反転、頭が下になり宙づりになったシリカは、仮想重力にいとも簡単に従う己のスカートを必死に守る。
「あれ、この……届かない!」
片手でスカートの裾を押さえ、片手でツタを斬ろうとするが、体勢がうまく取れず手の出しようがない。
シリカは真っ赤になりながらヘルプを叫ぶ。
「リュウヤさん、助けて!お願いです!見ないで助けて!」
そんなシリカにリュウヤは、
「……これはこれで写真に収めるべきか。いや、さすがにこれはアウ
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