第十四話 見られたくないもの・聞かれたくないもの
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興味を示そうとしなくなった。
しかし、今だけはそんなことは忘れて存分に花々を愛で続けた。
「おいおい、そんなとこだけで満足してたらもったいないぜ?」
そんなシリカをリュウヤは呆れながらも微笑みを浮かべながら声をかけた。
「街だけじゃなくて、層全体が花だらけなもんだからなぁ。北の端にある《巨大花の森》なんて相当すげえぞ」
ま、時間がねえから行けねえけどと肩を竦めるリュウヤにシリカは笑いかけ、「また今度にします」と告げる。
「そうだな、そん時は俺もついてってやるよ」
「ぜひお願いしたいです!」
そんな会話をしながらシリカはふと周囲を見回した。
花壇の間にある小道を歩く人影は二人一組ばかり。それはもちろん男女だ。どこを見ても男女のプレイヤーが寄り添って、花を愛でていたり、会話をしていたりと、見れば見るほどここがそういう場所なのだと理解させられる。
シリカは傍に立つリュウヤにそっと視線をやった。
あたしたちも、そんな風に見えてるのかな……?
だが、その思考は昨日から思っていた疑問と衝突し打ち砕かれる。
今のリュウヤは、カーソルを確認しなければNPCとなんら変わらない格好をしているのだ。
なぜそんな格好をしているのかは、「戦闘用の服が窮屈だから」と説明を受けた今でも要領を得ない。
それに、今の格好より部屋にいた時の格好の方がいい気がする。その格好で今二人でいたら……。
「ん?どしたのシリカ。急に頭振って。なんかあった?」
「な、なんでもありません!さ、さあ、フィールドへレッツゴーです!」
主街区を抜け、南門まで歩いてきた二人の目の前に銀色の鉄で編まれ、つる性の植物が巻き付いた巨大なアーチがあった。
そこを出るともう圏外だ。シリカは気を引き締める。
「さって〜、こっからいよいよ冒険開始なわけだが……」
「は、はい」
「ほらこれ、一応持っとけ」
相変わらずの簡素なシャツ姿のリュウヤはポケットから青い結晶を取り出しシリカに手渡す。高価な転移結晶だ。シリカは思わずリュウヤと結晶へ視線を往復させる。
「あの、あたしも持ってますよ?転移結晶」
「いいからもらっとけ。そんで俺がやべえと思ったら指示するから、どこでもいいから跳んで逃げろ。分かったか?」
「え、えっと……」
「はいシリカさん、お返事は?」
有無を言わさなぬ眼。
「は、はい」
返事をするしかなかった。
ん、よろし、と言いながらリュウヤは窓を開き装備を変えた。昨日《迷いの森》で見たものと同じ、青いパーカーに龍を象ったピアス、リングネックレスをつけた格好。
「う〜し、ほんじゃ行きまっせ?」
「はい!」
軽い調子で門をくぐり抜ける
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