第十三話 安心してください、下は履いてますよ
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「えっとな……これが四十七層で、ここが主街区な。んで、こっちにあるのが思い出の丘。まぁたいして強いモンスターは出てこないから安心しろ。そんでーーー」
リュウヤはマップを操作しながら淀みなく四十七層の地理を説明していく。
自分のささやかな望みが叶えられているという実感と、彼の柔らかな声がシリカの心を温めていく。
「ーーーで、この丘越えると……」
一瞬、リュウヤの声が途絶える。
しかし何事もなかったかのように説明を続けるが、そろ〜っとイスから立ち上がり、くちびるにひとさし指を当てながらドアに近づいていく。
「もうすぐ見えてくるんだけどそこでな〜にしてんのかなお兄さぁぁぁん!」
バンッ、と大きな音を立てドアを開けるリュウヤの奥には一人のプレイヤーが。
惚けた顔を見せるが瞬時にその場から去っていき、急いでリュウヤの元に駆け寄ったシリカが見えたのは階段を転けそうになりながら降りていく影だけだった。
「なんだったんですか?」
「ん?話聞かれてたらしいわ」
「そうですかーーーって、ええ!?」
平然と盗聴の事実を告げるリュウヤに、そのままスルーしそうになる。
「で、でも、部屋の中は聞こえないんじゃ」
「聞き耳スキル上げてっとその限りじゃないんだわ。そんなスキル上げてんの、そうそういないけどな」
「そんな……」
不安に駆られるシリカ。それに対してどこまでも落ち着いているリュウヤーーーいや、落ち着いているのではなく、面白がっていた。
「くっく……あいつの顔、マジおもろ……!」
「リュウヤさん、笑ってる場合じゃ……」
「いや、マジ面白かったぞ。記録クリスタルあったら撮っておきたかったくらいだ……ククっ」
ドアを閉め、しばらく口を抑えて笑っていたが、笑い終わるとすぐにメニューウインドウの操作に入った。
その傍ら、ベッドに座り込み不安で一杯になって両腕で自身の体を抱くシリカを見やると、
「そう心配すんな。お前との約束と安全は絶対に守ってやっから」
ポン、と頭の上に手を置き、操作に戻る。なにやら誰かにメッセージを送っているらしい。
その姿が、もう遠い昔のように感じる現実世界で見た風景を思い起こさせる。
シリカの父はフリーのルポライターをやっている。パソコンに向かって気難しい顔でタイピングしながら仕事をしていた父の姿に、リュウヤが重なる。
彼のことはなにも知らない。信用できる確たる証拠なんてなにもない。けれど、もうなにも怖くなかった。怯える必要なんてどこにもない。
青年の背中を見つめながら、気づけばシリカの意識は途絶えていた。
朝を告げる柔らかな音色が響く。
自分にしか聞こえないアラームを切
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