第十三話 安心してください、下は履いてますよ
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大人に大人らしいと言われるのはこんなに恥ずかしかったっけ、と思いつつ、マグカップに注がれたお酒を飲んでいく。
体が温まっていくのを感じる。悲しいことが多かった一日だからなのだろうか、この温かさが身にしみる。
徐々に下がっていく視線。シリカはぽつりとつぶやいた。
「……なんで、あんな意地悪言うのかな」
リュウヤの緩んだ顔に、少しも気負いを感じせずに笑みを浮かべる。
「それがあいつの本性ってことだからかな」
「えっ……それは……」
直球すぎる発言に、素直に同調することができず言葉に困るシリカ。それを見てリュウヤは悪い悪い、と片目を瞑った。
「これは俺個人の考え方だからな。納得できるかどうか分からんが、その問いに俺の意見を提示しよう」
教師のような口調になるリュウヤ。面白がっているのではないのだろうが、マジメとも言えないその態度に、少しだけ心にゆとりが取れた。
「シリカはMMOはここが初めてだろう?」
「はい、そうです」
「なら、ロールプレイってのは知ってるか?」
「知ってます」
「じゃあ話は早いなーーーそれは他のゲームじゃ当たり前にやってたことだ。自分のやりたいプレイスタイルで楽しんでた。ソロでひたすら強化するのも、パーティー組んで楽しく遊ぶのも、人助けするのも、商売するのもな。その中には悪役に徹する奴もいる。それが当たり前だった」
けど、とマグカップを片手に持ちながら続ける。
「ここじゃその当たり前が通用しないんだわ。ここはゲームの中じゃない。立派な現実だ。それが分かってんだか分かってないんだか……」
呆れたようにリュウヤは肩を竦めた。
「だからこそ、ここじゃやること全てが当人の本性を浮き彫りにする。オレンジプレイヤーなんてのはその代表格だ」
明るい口調とは裏腹に、わずかに込められた侮蔑の感情。
オレンジプレイヤーとは、通常グリーンで表示されるプレイヤーのカーソルが、オレンジへと変化したプレイヤーのことだ。
システムに規定された犯罪を犯せばグリーンからオレンジへと変わる。
つまり、オレンジプレイヤーとはこの世界において犯罪者の代名詞なのだ。
だから、とリュウヤはニヤリと笑い、
「シリカみたいないい子は、さっきみたいにみんなの人気を集めるんだよ」
「か、からかわないでくださいってば!」
ハッハッハ、と朗らかな表情を見せるリュウヤ。からかわれてばかりでは納得がいかないとシリカは口を開く。
「そういうリュウヤさんだって、あたしを助けてくれたし……い、いい人じゃないですか」
自分で言いながら段々と恥ずかしくなってきて、次第に言い淀んでいく。これじゃあまたからかわれるだけじゃん、とリュウヤの反応を伺う
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