第十三話 安心してください、下は履いてますよ
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《風見鶏亭》一階の広いレストラン。
その奥の席にシリカを座らせ、リュウヤはフロントでチェックインを済まし、メニューウインドウを操作し終えるとシリカの向かい側に座った。
自分のせいで不快な思いをさせてしまったことを謝罪しようとシリカは口を開こうとするが、
「礼はいらんよ。むしろ俺の方が謝るべきだ。すまん」
牽制され、逆に頭を下げられてしまった。
「な、なんでリュウヤさんが謝るんですか。そんな必要ないのに……」
「いや、俺が未熟なせいでいたずらに場をかき乱してしまったしな」
確かに、一言どころか二言三言余計だった。
別れ際なんて、ロザリアがブチギレていたのを見て、
「図星ですか、オバさん?」
とのたまって、更に怒りを買ってからその場を去ったのだ。余計にも程がある。
しかし、理由はなんであれリュウヤが悪いわけではない。
「とりあえず顔を上げてください。謝るべきは問題を持ち込んだあたしですから」
悪いのは自分だと主張するシリカにリュウヤはゆっくりと頭を上げた。それでもリュウヤは自分が悪いと思っているのか目が伏せられている。
これではどっちかが折れないと平行線のままだ。どうするべきかと考えていると、NPCのウェイターが二つのマグカップを持ってきた。
湯気が出ていて、それにいい香りがする。
頼んでいないのに手をつけていいものか悩んでいると、リュウヤに飲んでいいぞと促される。
いただきます、と言ってから甘い香りが鼻腔をくすぐる少し黄色みを帯びた液体を啜った。
「わぁ……おいしい……!」
「だろ?」
リュウヤは満足そうに頷く。
スパイシーな味わいは刺激的かつ濃厚で、だが後味はスッキリしている。確か、遠い昔に父親に少しだけ味見させてもらった、ホットワインと似た味がする。
しかし、この店のドリンクは全て試したはずなのだが……。
「リュウヤさん、これは?」
「実はNPCレストランじゃ持ち込みが可能でな。俺が持ち込んだ酒だ。《ゴルダリアン》っつうアイテムで、カップ一杯で筋力の最大値が一上がる優れもんだ」
「そ、そんな貴重なものーーー!」
「うん、貴重だよ。だから、これでさっきのはシリカも含めてチャラにしてくれないか?」
慌てていたシリカに、リュウヤは言いくるめるように苦笑する。
なんて話のうまい人なんだろうか。自然にそう思えてしまう。
先ほどのロザリアとの口論の話をすれば当然このようなことになると分かっていたのだろう。
子どもみたいなことをするが、やはり年上なんだとシリカは実感する。
「分かりました。お互い様ということで」
「さすが、シリカちゃんは大人だねぇ」
「か、からかわないでください……」
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