九十二 女の意地
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
逸れてしまった場合、数分間は身体に戻れず、またその間、術者の本体は人形と化す諸刃の剣でもある。
だからいのは、中忍予選試合で春野サクラと対戦した際に用いた手を使った。即ち、己の髪にチャクラを流し込み、強固な縄と化した髪糸で相手の足を拘束したのだ。
秘かに抜いていた髪の毛を崖の傍で落としておく。そして敵がキバ達を追おうと崖の傍で地を蹴ろうとした瞬間、足首を縛るように前以て罠を仕掛けておいた。
右近に身体に入り込まれたのは失態だったが、逆にこれを逆手に取る事をいのは咄嗟に考えた。
何故なら【心転身】の術を使っている間、自分の身体はどうせ無防備になる。ならば、右近がいの自身の肉体を支配している際、左近を操ればいい。
つまり現在、左近の身体はいのに乗っ取られている状態なのだ。
「貴様……ッ!!」
此処に来て初めて焦りを見せた右近に、左近、否、いのは笑ってみせた。
「奥の手は最後まで取っておくべきよ」
そう言いながら、足首に絡まる彼女自身の髪を解く。そして、奪い取った左近の身体でいのは相手を突き落とした。
右近が入り込んでいる、いの自身の肉体を。
くノ一ルーキーの中でも抜きんでいる存在。だがそれがどうしたというのか。
そんなもの結局、井の中の蛙でしかない。
だから私は――――。
(形振り構っていられないのよ…っ!!)
真横の、崖底へ。自らの身体を突き落とす。
「女だからって、舐めないでよね…ッ!!」
落ちる。
共に墜落する左近の身体を、右近は信じられないとばかりに見つめた。
「じ、自決、だと…っ!?」
いのは、右近が入り込んでいる自身の身体を突き落とすと同時に、崖から身を投げたのだ。
乗っ取っている左近の身体で。
(チッ、こうなったら…)
身体を乗っ取るという術がどれほどまでか知らないが、このまま女の身体に入り込んだままなら、どの道、墜落死は免れない。
それなら一度肉体に戻ったほうがいい。上手くいけば左近の身体を乗っ取っている女を追い出せるかもしれない。
以上の考えに至った右近は、すぐ傍らで墜ちゆく左近の肉体に向かって手を伸ばした。そのまま、ずるり、と身体に入り込む。
刹那、いのの精神は左近の肉体から弾かれた。
直後、入れ替わった視界に、いのは眼を瞬かせた。身体を見下ろす。
自身の肉体に無事戻った事に安堵すると共に、彼女は歯噛みした。
(く…ッ、やはり二つの精神を同時に乗っ取るのは無理ね…っ)
「おい、左近!起きろ!!」
自分が身体に入り込んだ事により、いのの精神を追い出したと知った右近が左近に呼び掛けているのを尻目に、いのは左近の手から自分の髪の毛を奪い取った。
左近の足首を拘束し、動
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ