第二百二十四話 帝との話その十三
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「だからな」
「茶ですな」
「そうじゃ、昔からじゃ」
こう言うのだった。
「御主の茶も政や戦に差し障りが出来ねばそれでよい」
「そのことは弁えております」
「うむ、御主ならばな」
生真面目な資質の佐久間ならとだ、信長も応える。
「大丈夫じゃな」
「ご安心下さい」
「だから御主には紀伊のかなりの部分も預けたのじゃ」
四十万石近くだ、佐久間には預けているのだ。
「あの地も無事に治めよ」
「励ませて頂きます」
「高野山もしかと見るのじゃ」
「その高野山ですが」
今度は雑賀が言って来た。
「近頃は静かです」
「聖達もじゃな」
「不心得者は随分と減りました」
「それは何よりじゃな」
「門徒達も日々の勤めに励んでいます」
「それも何よりじゃ、しかし紀伊でも苦労したのう」
これまでの戦のこともだ、信長は述べた。
「あそこでは随分激しい戦をした」
「そうでしたな」
雑賀はその時は信長と敵同士だったがあえて言った、このことをあえて話しつつそのうえでこうも言ったのだった。
「闇の旗や服の門徒達も出て」
「御主も知らなかったな」
「はい、全く」
これが雑賀の返事だった。
「ああした者達は」
「そうじゃな、御主も」
「はい」
まさにだ、その通りだというのだ。
「ああした者達については」
「その通りじゃな」
「急に。しかもあれだけの数が出て来ました」
「伊勢でも近江でも越前でもな」
そのどの国々での戦のこともだ、信長は話した。
「もう少しで勝三達を失うところじゃった」
「はい、危ういところでした」
実際にとだ、森も応える。
「あの時は」
「猿夜叉が来なければな」
「全く以てそうでした」
森は長政を見つつ信長に答えた。
「実に」
「そうじゃな」
「あの闇の旗や服の門徒達によって」
「門徒の色は灰ですが」
このことは明智が指摘した。
「闇の色はありませぬ」
「黒でもなかったのう」
「はい、あれは確かに」
「闇じゃな」
「その色でした」
「それがずっと気になっておった、あの者達が何者かもな」
信長もだ、そうだったというのだ。
「それを確かめる為にもな」
「馬揃えをですな」
「行うとしよう」
こう言ってだ、信長は馬揃えを命じるのだった。この命は諸大名にも伝えられた、無論その中に徳川家も入っている。
家康はすぐにだ、家臣達に言った。
「ではこれよりな」
「はい、すぐにですな」
「その馬揃えの用意をして」
「そして、ですな」
「我等もですな」
「そうじゃ、出るぞ」
家康は己の家臣達に述べた。
「よいな」
「畏まりました、では」
「これより」
「具足を整えるのじゃ、しかし」
ここで家康はこう言った。
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