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大正牡丹灯篭
7部分:第七章
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「変わってくるものなのです」
 明るいが優しい声で彼に言う。その言葉はそのまま彼の心に入って来るものであった。不思議な説得力のある言葉であった。
「だからです。こうした場も」
「何回か来るうちにですか」
「左様です」
「見ろ、木村」
 社長はまた辺りを指差す。そこでは海軍の若い将校が芸者達を相手に賑やかに笑っていた。
「あの海軍さん達は御前と左程変わらない歳だな」
「はい」
 見ればそうであった。彼によく似た感じの将校までいる。
「そういうことだ。彼等も最初は慣れてはいなかった」
「何回も来るうちにですか」
「仕事だってそうだろう?」
 今度は何気なく仕事にも言及する。
「何度もやるうちにさまになってくるな」
「はい、それは」
 仕事のことになったので真面目に答える。この真面目さが彼であった。
「まあ御前は最初から立派だったがな」
「いえ、私は」
「それだ」
 ここで彼の真面目さに頼もしい笑みを見せるのであった。
「その真面目さがいいのだ。わかったか」
「そうだったんですか」
「そうだ。だがな」
 そこまで話したうえでまた顔を真剣なものにさせる。
「真面目過ぎて。周りが見えないのもよくない」
「はあ」
「社長の仰る通りですな」
 それに住職も笑顔で頷くのであった。
「時として破目を外さなければ駄目ですな」
「住職はまた外し過ぎでは?」
 社長は今度は住職に突っ込みを入れた。
「遊びも大概にしないと毒ですぞ」
「ははは、毒も知らねばなりませんので」
 住職もまた懲りない。相変わらずの様子である。

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