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大正牡丹灯篭
4部分:第四章
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のを感じた。
「誰もが若くして亡くなった。労咳でな」
「労咳ですか」
「そうだ。それでな」
 所謂結核のことである。この時代はそれが脚気と並ぶ国民病であり多くの人間がこの病で命を落としている。この時代では宮沢賢治も結核で若くして亡くなっている。
「死んでいるのだ。皆な」
「皆と言いましても」
「御前の聞きたいことはわかっている」
 社長はまた藤次郎に述べた。
「娘さんのことだな」
「そうです。その人のことも御存知なのですね」
 藤次郎は自分の声がうわずっているのがわかった。麗華への気持ちは抑えられなくなっているのが今この状況でもわかった。
「それでしたら」
「今あの娘さんが何処にいるのかも見当がついている」
 社長はまた藤次郎に告げた。
「昼は会っていないのだったな」
「はい」
 藤次郎は素直に答えた。これは事実である。会っているのは夜だけである。彼はそのことに何の疑念も抱いてはいなかった。何故なら彼は昼に働いているからである。そうして夜に会う。それで奇妙に思うというのも有り得ない話であった。
「そうか。では昼にも会ってみるといい」
 社長はそこまで言うと中西に顔を向けた。そうして言うのだった。
「暫く留守にする」
「わかりました。それでは」
「うむ、その間は頼む」
 そこまで告げて彼は席を立ち帽子立てにかけてある自分の帽子を取ってから藤次郎に対して告げるのであった。重い声で。
「一緒に来るんだ。いいな」
「わかりました」
 藤次郎はその言葉に頷いた。そうして社長について外に出るのだった。

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