05
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ー!
「エンリコ・ヴェルター・ファーン伯爵様。 恐縮ですが、お話中の申し訳ありません」
そんな時、救いの声が割りこんできた。
清廉でとても落ち着いた女性の声が、ファーン伯爵に向かって話しかけてきた。
その女性の声は丁寧で物腰穏やか…そうなのはわかるが、自分の視界にはファーン伯爵の体が影になって見えていなかった。
護衛の人達の間を縫うように近づいて来たその女性に気付いて、ファーン伯爵は振り返った。
その時、伯爵の向こうに見えた女性は―――。
「ん、おぉ、君か」
「はい。 御無沙汰しております」
メイドだ。 メイドさんだ!
色んな呼び方はあるけど、あれは紛うことなきメイドである!
黒のワンピースドレスに白のエプロンで二色に整ったシンプルなコントラスト。
作業着である事を追及し、女性の服装である事を意識して見苦しくないバランス。
ワンポイントの特徴でもあり、メイドの魅力の一部として醸し出す純白のホワイトブリム。
スカート裾にフリルが付いているが、手首の袖口にダブルカフスで詰めていて、麗しくもキッチリとした印象がとても強く感じられる。
服飾は派手にせず余計な部分は排除しているが、腕に花の意匠をあしらったパッチが縫い留められていた。
イイなぁ。 実にイイ。
まさかこんな所で出会えるとは思わなかったが、メイドさんという魅力的な存在は、自分の心を大いに癒やした。
ファーン伯爵と再会した事でガッチガチに緊張していたのが、今はそれも解れてほっこりする。
「(は〜……イイなぁ。 傭兵人生ではほぼ縁がないけど、メイドさんって見ているだけで和む……)」
働く女性の中でもメイドという存在は自分にとっては特別華々しく映り、その有り様の佇まいだけで充足感を得られていた。
「―――と言うわけですので、姫様が直々のお呼び立てです―――そちらの方に」
「なっ…!?」
はっ…!?
メイドさんに見惚れていて、つい聞き逃してしまっていた。
メイドさんとの間でいつの間にか何やら話が進んでいたみたいだ。
何の話をしていたのかわからないけど、ファーン伯爵も何か驚いているようで、困ったような表情をさせてこちらを視線を向けてきた………え、僕?
ファーン伯爵はこちらをじっと見詰めていた。
「(…なぜに?)」
ごめんなさい、聞き逃してしまったので話の流れが掴めません。
あ、ファーン伯爵が項垂れた。
「まさか、姫
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ