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ら階下を見下ろしていると、忙しなく動いている人を見つけた。
それは看板娘らしき女性だ。
「あ、可愛い」
酒臭い男達の周りで元気な笑顔を運ぶその姿は、二階から見ても華やかに見えた。
両手にいくつものジョッキを運び、右から左へ店内を動き回る様は、見てて応援してやりたくなるものを感じた。
年若いのに新米臭さが見えない看板娘は、酒を嗜む男達から好意的な声が投げかけられていた。
「お〜い! エマちゃーん、こっち酒追加頼むよー!」
「なんならこっちで酌してくれよー!」
からかい3割好意7割といった声を集めるあの可愛らしい看板娘は、どうやらエマと言う名前みたいだ。
観察するように眺めていると、エマという名前を呼べばクルリとその方に視線が向いては、その声の方に向かって颯爽と駆けつけていく。
「はいは〜い、ただいま参りまーす」
呼べば飛ぶように動き回る彼女は見ていて可愛らしい。
あれはきっと人気があるのだろう。 自分でも可愛い、と呟いたくらいだ。
呑気にポヤ〜ン…と眺めていたら、愛でたいという気持ちに魔が差したような気がした。
もしかして、こっちから呼んだら気付いてくれるのかな〜…と、ちょっと試してみたいような考えが脳裏をよぎる。
一回だけなら…一回だけなら、と思い、試しに呼んでみた。
「エ……エ〜マちゃ〜ん―――」
ただし、小声でだった………。
試したくなる、とか考えておきながら、いざそれを本気でやろうとする度胸が足りてなかった。
荒っぽい人も、悪酔いする人も相手をする酒場の看板娘相手に何とも情けないと思うだろう。
しかしこっちの小心者のハートでは、気付かれなくても構わないようなかな〜り小さい声しか出なかった。
実に意気地なしである………くすんっ…。
「ん?」
しかし、その後ろ向きな心情で絞り出した声は看板娘エマに届いたのか、おもむろに二階部の手すり…そなわち自分へと向けられた。
「あ、食い倒れさん!」
「へぁっ!?」
変な声が出てしまった。
いきなりな言い草と共に、エマはこちらの存在に気付いてくれたようだけど……なぜ“食い倒れ”?
疑問に回答を得る間もなく、看板娘のエマは階段へ向かって駆けだした。
だがその前に、軽やかな足取りを止め、洗い場へ下げるべきだろう空ジョッキをその辺の客のいるテーブルに置いた。
酒場という無礼講の場であるためか、可愛らしい笑顔と「ちょっとごめんね♪」という言葉を置いて、失礼な態度である自覚をおくびにも出さず、階段を登って二階へと上がってきた。
お〜いエマちゃーん…!という嘆く
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