月下に咲く薔薇 5.
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た豊かな胸に、クランが一瞬苦い顔をした事も知りながら。「もし私なら、最後に手でも握られたりしたら、いっぺんに元気が出ちゃうかも」
「手、ねぇ…」いぶきまでもが、ミヅキの胸元に注目し、何やら眉の端を吊り上げる。
「じ…、じゃあ、ケーキにするか他のにするかも、これから決めるとして」女性間の険悪な視線を遮断すべく、デュオがちらりと大山を伺う。「議長〜」
「あー、はいはい」
大山がきりりと会議室の中を見回せば、悪のりがすぎたとの自覚があるミヅキ他、議題に関係のない事で脳内を満たした男女が一斉に視線を逸らせる。
アイディアが成長してきたところで、大山が、ケーキにデコレーションという案で皆に了承を求めた。
反対する者は、1人もいない。
その後、クロウの知らない買い物の世界が延々と打ち合わせの中に出、最終的に1時間後、一同で買い出しに向かう事が決まった。
ケーキの贈呈は、午後3時より少し前。その買い出しの前に扇と話をつけるのが、ロックオンの役割だ。
解散し、それぞれが仲間達と雑談しながら部屋を出てゆく中、中原はクランを引き留め一旦会議室を出てゆく。そして戻って来た時には、その手に蓋のない青いタンブラーを一つ持っていた。
「水を入れてきたから、ここに差して」
「おおっ。ありがとう、中原」
ミシェルが黙って見守るその視線を浴びながら、クランは手にしていたバラをタンブラーに差し、先程まで大山が使っていた机の端にそっと立てた。
「んふーん。どうだ? ここなら、皆で花が楽しめるぞ。午後にはここで、デコレーションもするのだしな」
「ま、いいんじゃないのか」妥協したミシェルが漏らすと、クランはそれで満足したのか「ミシェル。これから買い物の準備だ!」と言いながら幼馴染みの手を引いて、さっさと室外に消えてしまった。
残ったのは、クロウとロックオン、そして中原の3人きりだ。
「グッジョブ、中原さん」
ロックオンが親指を立てると、何故か彼女は赤面した。
「じゃあ、そろそろ俺も扇を探しに行くか」
大きく伸びをするロックオンに、「俺もついて行っていいか?」とクロウが親指で室外を指した。
「暇だからか?」
「ああ、暇で暇で仕事が欲しい」
「なら、俺は扇を探しに行くから、お前はちょっと頼まれてくれないか?」
「何を」
ロックオンからの依頼とは、また珍しい事もあるものだ。
何をして欲しいのかと思えば、彼は通路に落ちているほんの僅かな影の色を左目のみの視線で指し示した。
誰かが、会議室の外に立っている。
それだけで、クロウは多くを合点した。
中原が不思議そうに見守る中、近づいている事を悟られぬよう気を配り、壁に張りついて聞き耳を立てる。
2人分の声がした。1人はキラで、もう1人は渦中のロジャーと思われる。
「終わり
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