月下に咲く薔薇 5.
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れどれ…」
2枚綴りの資料には、既に贈り物をする旨の案が記されている。改まった場は設けず、1人1人に2〜3人でメッセージ・カードを添えた贈り物を渡す。煮詰めるべきは、「何を」の部分だ。
大山達が21世紀警備保障の会社名を背負ったまま黒の騎士団に伝えたいものは、日本人が日本人に向けている暖かい思いだ。もし大時空震動によってこの地球圏に2つの国土が出現しなければ、彼等は皮膚感覚のレベルで痛みや悲しみを共有し、今程隔たりはしなかったろう。
大山や谷川達は、日本人の細やかさで黒の騎士団の傷を癒そうとしている。勿論、拒絶される可能性を十分に承知した上で。
皆が一通り資料に目を通すまで待ってから、大山が切り出す。
「例という形で、案の一つを書かせてもらったわ。叩き台として提示したつもりよ。改善すべき点、勿論別な案も、あったら積極的に出して欲しいの」
一度間を取ってから、「俺は、これでいいと思う」とアスランが、資料記載の案を推した。「頭でわかっているなら、後は気持ちの問題なんだし。かえって、こういう企画に黒の騎士団のメンバーを誘うっていうのも有りじゃないのか」
「いいね、そういうの」親友の提案を、キラも隣からそっと推す。「黒の騎士団の中にだって、同じ仲間の痛手を心配している人はいると思う。例えば、扇さんとか。もうこんなにいい案が出ているのなら、僕は、あの人を誘いたい」
「扇、ねぇ。確かにあいつは、いつまでも感情に流されるタイプじゃないな」ロックオンも同意し、「俺が誘おうか?」と自らを指す。
扇もまたロックオンと同様、静かに人に好かれるサブ・リーダーだ。所属する組織の立ち位置から見ても、ソレスタルビーイングと黒の騎士団は相通じるところが多い。
周囲の是認を見届けてから、「じやあ、ロックオン。貴方にお願いするわ」と大山がこの件をロックオンに委ねた。
「で、問題は贈り物の中身か…」エイジが資料をめくりながら自問すれば、斗牙が「花」と呟いてから、「それともコーラ?」と喜色を浮かべる。
「コーラはちょっと」ルナマリアが苦笑いをしつつ、却下側に押す。「でも、使ったらなくなる物の方がいいっていうのは本当ね。こういう贈り物だから、後々まで残るっていうのは気まずいし」
「なら、食べ物っていうのはどう?」
琉菜が斗牙を顧み、コーラの遠い遠い親戚筋を推した。
「それ、いいね!」琉菜の案に微笑む斗牙は、いつもの無垢な少年に戻っている。
ほんのりと赤面する琉菜の前から、「私も食べ物がいいと思うぞ」とクランも後押しに加わる。「甘〜いクリームをたっぷりと絞ったケーキが嫌いな奴はいないぞ! そんなケーキを、男には女から。女には男から贈るのだ! どうだ? いいアイディアだろう」
「それ、いかす」真っ赤な唇をきゅっと広げ、ミヅキが右手を挙げた。その時に揺れ
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