月下に咲く薔薇 5.
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
苦悩や覚悟を、斗牙だけが数段階前の部分で理解しているという事だ。誰がそう育てたのかは知らないが、斗牙の年齢を思えば惨い事のような気がしてならない。
斗牙が、今回の企画に向いている。脳内へと蘇ってくる推薦に、クロウはミヅキの計算を見た。
なるほど、おそらく理由はもう一つある。ゼロや玉城が赤木やワッ太に苛立つ事はあっても、斗牙に感情をぶつける黒の騎士団が誰か1人でもいたか。そう、答えは否だ。
「斗牙は適任、と俺も思いますよ。ただ…。それにいつ気づいたのか、後で訊いてもいいですか?」
ミシェルが、やや挑戦めいた表情で体を捻りミヅキに尋ねた。どうやらミシェルも、斗牙の件と今この顔ぶれが揃っている理由は別であろうと踏んでいる。
「あ〜ら。私を口説くつもり?」
「もし、そうだと言ったら、どうします?」
「そうね…」考える振りをしたミヅキだが、返答の必要は全くなかった。
クランが隣のミシェルの腕を引き、窓側へ倒し込むよう机に頭を打ちつけたからだ。「全く、お前という奴は…」と愚痴をこぼすクランの隣で、俯せのままミシェルはぴくりともしない。
「お…、お大事に…。という事で、みんなもこの話はもうお終いにしましょう」
相変わらず、ミヅキはこの件について妙に片付けを急ぐ。
そのミヅキへの返答も兼ねているのか、「俺は、今ので納得できた」と赤木が皆を見回して声を張り上げた。「だからそろそろ、仲間に疑問をぶつけるのはやめにしないか? 俺は、斗牙と一緒にこの企画を進めていたきい。体験するのがいいなら、やろうぜ。俺達にとっては、企画が終わった後に色々良くなる事の方が大切だろ?」
「赤木さん…」
笑顔を取り戻した斗牙の一言には、赤木への謝意が込められていた。思いをはっきりと言葉にする赤木は、元々エイジとよく似ている。
「ご尤も。俺も、赤木の意見には賛成だ」
ゴチャゴチャしたものには、ここで一旦ご退出を願おう。クロウが赤木の意見を押すと、皆それぞれに多少のわだかまりを残しながらも「そうだな」と言って頷き退く。
しかも、ちょうどドアが開いて、キラとエィナ、ドロシーが、増援メンバーの飲み物を運んで来た。カップの置かれる軽い音が繰り返されると、大川も改めてふぅと息をつく。
追加の資料を揃え谷川と中原も戻って来ると、デュオが「ほいっ」とそれを取り上げ、さっさと後ろに送り出した。追加の資料を必要とする者は自分の分を手元に1部を置き、残りを横や後ろへと順次送り出してゆく。
あっという間に資料は行き届き、谷川はいぶきの隣に、中原はデュオの隣を敢えて選んだ。
「これで、ようやく始められそうね」
打ち合わせ自体はまだ始まっていないというのに、既に一仕事済ませたようなこの疲労感。余り長引かない事を祈りながら、クロウはまず手元の資料に目を通した。
「ど
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ