月下に咲く薔薇 5.
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うつもりじゃなかったんだが」
諦観そのもののミヅキに驚いて、クロウは首の横振りを繰り返す。
「いいのよ。こっちにだって負い目があったんだから」
「負い目?」
クロウとロックオン、大山達はロジャーを。エイジ達グランナイツとアスランやシンはミヅキを見つめる。しかし、ロジャーはその件について自ら語ろうとはしなかった。
「ねぇ、エイジ。あんたならわかるでしょ?」
声が一段下がり、同じチームの人間としてミヅキがエイジに訴えかける。
「何がだよ」
「斗牙には、こういう経験がもっと必要なんだって。だから私が巻き込んだのよ。リィルとエィナは、斗牙が手伝うのならって、自分から進んで参加しようとしてくれたの」
「斗牙が? …そっか…」
肩の力を抜くと、あれ程噛みついていたエイジが突然ウサギのように大人しくなった。
クロウは、ロックオンと顔を見合わせる。「わかるでしょ?」は、エイジの中にある何に働きかけたのか。知りたくなるのは当然だ。
「なぁ。頼むから、俺達にもわかるように説明してくれないか?」
絶好のタイミングで皆の代弁者となった青山が、グランナイツの方に体を捻る。
ミヅキが答えるのかと思いきや、「それは俺から説明する」と他ならぬエイジが立ち上がった。
「斗牙は、ちょっと変わった育ち方をしてるんだ。いい奴で、子供みたいだろ? だけど…、だからその分、経験が足らないんだ。思いやりの示し方とか、相手の事を思うってやつが」
「それで今朝、『斗牙の方が向いていると思う』って言ったのか」
納得するクロウに、「ああ」とエイジが頷いた。そして自分のすぐ後ろの席に座る斗牙に向き直ると、「お前も、本当にこういう事から逃げなくなったな」と優しく笑いかける。
「うん。あの後ミヅキに誘われたんだけど、…僕がやってもいいのかな」
ここで、クロウは初めて斗牙の躊躇う表情を見た。
何故だろう。小さな感動すらある。
ソルグラヴィオンから降りた斗牙は、まるで生まれたての赤ん坊を彷彿とさせる無垢な少年だ。人当たりは良く仲間達にも受け入れられているが、天然と片付けるには余りにも無理のある直球の言動は、時としてZEXISのメンバーのみならずZEUTHや同じグランナイツのメンバーをも驚かせてしまう。
クロウは、斗牙がそのような思慮の浅い側面を持っている事を案じていた1人だ。それは、赤木の真っ直ぐな性格とは異なるもので、個性ではあるが性格ではない。
赤木は、曲がった道を知るからこそ、自分の性分を真っ直ぐにしようと決めた男だ。つまり赤木の性格は、様々な分岐を選んで通る中で、自ら「こうありたい」と構築した結果にあたる。
しかし斗牙は、無垢であるが故にその過程が欠けている。羞恥心が欠けているのも、内面の構築が甘い為なのだろう。
大きな力を持った者の
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