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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 5.
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「何で、いきなりここに全員が揃うんだよ。ゆうべは無理矢理、俺だけに押しつけといて。どういうビックリだ?」
「はい、そこ。ぶつくさ言わない」ミヅキが最年長らしくエイジを牽制した後、周囲の机を見回してやや大袈裟に驚く。「なに? みんな飲み物持参?」
「じゃあ、もう一度私が」再び立ち上がろうとする琉菜をクランが制止した直後、「僕が行きます」と代わってキラが立ち上がる。
「悪いわね。私、缶ビール」言ってから周囲の白い目にひらひらと手を翻し、ミヅキが「冗談冗談」と笑ってごまかす。「コーヒーね。きっつーいエスプレッソ。ミルクと砂糖入りでお願い」
「キラ様。私もお手伝いいたします」
 現役のメイドだというエィナも立ち上がり、飲み物のないメンバーから次々と注文をとり始めた。
「私も行くわ」
 遂には、ドロシーまでもがエィナと共に会議室を出る。
 一瞬の間ができ、会議室の前方には疎らな空席が生まれた。やむを得ない流れとはいえ、なかなか打ち合わせは始まらない。
 それを、今が頃合いと読んだクランが、気を引こうとして「全員注目」と声を上げた。
 いや。上げかけた、と言うべきか。クランの第一声は、エイジの険悪な物言いにあっさりと上書きされてしまった。
「もしかして、上手くごまかせたとか思ってないか? ミヅキ」
「あ〜ら、何の事?」
「まだ答えてないっつーの。今朝になったら、なんでこの打ち合わせにグランナイツ全員が揃ってんだよ」
「あらやだ。覚えてたんだ」
 何も蒸し返さなくても。露骨にそう顔に描いているミヅキが、体を捻り2列後ろの席へ睨みをきかせるエイジを艶のある半眼で一蹴する。
 その時、クロウは見た。ミヅキに向かって小さく首を横に振るロジャーの姿を。
 エイジの質問に答えてはいけない理由を、ロジャーは知っているとでもいうのか。
 クロウだけでなく、ロックオン、ミシェル、デュオ、赤木、大山、青山、いぶき、そして琉菜が仲間の様子から水面下に潜む何かを感じ取った。
 あっけらかんとした性格で付き合いやすいミヅキだが、実はパイロットとしての腕だけでなく広い視野と明晰な頭脳を持つ才女だ。彼女が隠すと決めたのなら、周囲が怒っても泣いても誤魔化し通すだろう。しかもそこには必ずや、全員を唸らせる程の深い理由がある。
 クロウの中で、幾つかの引っかかりが脳内に刻み込まれた。赤木達とロジャーは別口か? ならば、ロジャーとキラ達の間は一体どうなっている?
「悪い、ちょっと伸びるぞ」
 疑惑の積み重ねなどという望まない事をしたので、腹の底にストレスが溜まった。淀んだものを体内に出すつもりで、クロウは椅子に座ったまま大きく伸び上がる。
「…わかった。いいわね、ロジャー。私が話す」
 ミヅキが折れたのは、その時だった。
「ちょっと待て。俺は別にそうい
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