暁 〜小説投稿サイト〜
少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
A.G.E(アンジェ)
第七話:混沌の訪れ
[7/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
やら切り身の破片やらが飛び散る。


 後で掃除する羽目になるのは自分だと言うのに、害をバラ撒き続けて尚懲りない奴だ。


 そして読む気は無いので扉を閉めて、二階にある自分の部屋へと上がり、宿題の内一つを開く。


『食べるなら食べる! 食べないなら食べない! どっちかにしろ!』
『ブゲェェェェェッ!』


 下から怒鳴り声と奇妙な悲鳴が聞こえてきた。
 何が起こったかは想像に難くない。



 此処で今一度言っておくが、楓子には空想癖がある。
 その空想を妄想の域まで昇華させる、ある意味での天才でもあるのだが、生憎とそれを他者へ伝える能力が無い。
 具体的に言うなら《登場人物や能力や土地を作る》事は出来ても、《話の基礎や本筋を書きだす》事が不可能で、物語として仕上げる事が出来ないのだ。


 つまり、ノートに書きだされるのは延々と羅列される設定のみで、しかも時々意味が分からない。オマケに区切る場所が可笑しく、纏め個所もまとめきれていない。

 一度読ませてもらった際には文字酔いし掛けたので、もう読まないと俺は決めている。あんなもの読んだところで、何の得にもなりゃしねぇ



 静かな部屋で黙々と宿題をこなしていく俺の耳に、またも大きな声が飛び込んできた。


『こんなモノ捨ててしまえ!!』
『いや゛ぁー! やべでー!』


 うちの家族は一々騒がねば気が済まないのかと頭を軽く振り、机の方へと視線を戻そうとして……ドアをノックせず、お袋が入ってきた。


「……何?」
「楓子がね? 徹夜してまで書いたノートを焼納場所へ放り込まれかけているの。 御父さんを止めてあげて欲しいのよ」
「ハ、アイツにとってもいい薬だ」
「そういわずに。結構怒ってるみたいだし、そうなると拳の落とし所が必要になるでしょ?」


 お袋が言いたい事をまとめると、詳しく説明するなら俺がノートを焼かれぬよう変わりに殴られ、その間にノートを返してくれと説得して欲しい、といった具合だろう。


 ……が、つまる所トバッチリで殴られて来い、と言われているに等しい。


「断る」


 当然、そんな申し出を受ける必要などねぇ。


 アイツの事を可愛いと思っていたのも今は昔、そもそも悪いのは彼女自身で、俺には何の罪もない。楓子の為と痛い思いをしてやるほど、俺は良い性格をしていない。


 お袋が止めればいいモノを、態々俺の方へ頼むあたり、本当は愛されてないのではないかとも思ってしまう。


「お願い、止めてあげて。あのノートから何か霊的なモノを感じるのよ。それに唯の焚火に見えてもウチの境内で焚く炎は『清めの炎』。即ち聖なる力を持つの。合わさったら何が起こるか分からないのよ」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ