A.G.E(アンジェ)
第七話:混沌の訪れ
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やら切り身の破片やらが飛び散る。
後で掃除する羽目になるのは自分だと言うのに、害をバラ撒き続けて尚懲りない奴だ。
そして読む気は無いので扉を閉めて、二階にある自分の部屋へと上がり、宿題の内一つを開く。
『食べるなら食べる! 食べないなら食べない! どっちかにしろ!』
『ブゲェェェェェッ!』
下から怒鳴り声と奇妙な悲鳴が聞こえてきた。
何が起こったかは想像に難くない。
此処で今一度言っておくが、楓子には空想癖がある。
その空想を妄想の域まで昇華させる、ある意味での天才でもあるのだが、生憎とそれを他者へ伝える能力が無い。
具体的に言うなら《登場人物や能力や土地を作る》事は出来ても、《話の基礎や本筋を書きだす》事が不可能で、物語として仕上げる事が出来ないのだ。
つまり、ノートに書きだされるのは延々と羅列される設定のみで、しかも時々意味が分からない。オマケに区切る場所が可笑しく、纏め個所もまとめきれていない。
一度読ませてもらった際には文字酔いし掛けたので、もう読まないと俺は決めている。あんなもの読んだところで、何の得にもなりゃしねぇ
静かな部屋で黙々と宿題をこなしていく俺の耳に、またも大きな声が飛び込んできた。
『こんなモノ捨ててしまえ!!』
『いや゛ぁー! やべでー!』
うちの家族は一々騒がねば気が済まないのかと頭を軽く振り、机の方へと視線を戻そうとして……ドアをノックせず、お袋が入ってきた。
「……何?」
「楓子がね? 徹夜してまで書いたノートを焼納場所へ放り込まれかけているの。 御父さんを止めてあげて欲しいのよ」
「ハ、アイツにとってもいい薬だ」
「そういわずに。結構怒ってるみたいだし、そうなると拳の落とし所が必要になるでしょ?」
お袋が言いたい事をまとめると、詳しく説明するなら俺がノートを焼かれぬよう変わりに殴られ、その間にノートを返してくれと説得して欲しい、といった具合だろう。
……が、つまる所トバッチリで殴られて来い、と言われているに等しい。
「断る」
当然、そんな申し出を受ける必要などねぇ。
アイツの事を可愛いと思っていたのも今は昔、そもそも悪いのは彼女自身で、俺には何の罪もない。楓子の為と痛い思いをしてやるほど、俺は良い性格をしていない。
お袋が止めればいいモノを、態々俺の方へ頼むあたり、本当は愛されてないのではないかとも思ってしまう。
「お願い、止めてあげて。あのノートから何か霊的なモノを感じるのよ。それに唯の焚火に見えてもウチの境内で焚く炎は『清めの炎』。即ち聖なる力を持つの。合わさったら何が起こるか分からないのよ」
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