A.G.E(アンジェ)
第七話:混沌の訪れ
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いて左手を伸ばし、楓子のノートを掴んだ。
「読んでくれるの!? 流石兄ちゃんは優しいねっ!」
そして…………後ろへ放り投げた。
「に゛ゃーーーーーっ!?」
「麟斗、食事中に―――あっ」
楓子のこれまた五月蠅い悲鳴と、親父の説教の序文が重なる。
楓子は迷い無くジャンプし、直後ゴチンと言う音が響いた。……ざまあみろ。
親父は、大方甘さを見せて読むとでも思っていたのだろうが、残念ながら俺はあんたみたいに女の我儘をいちいち聞ける程、広い度量を持っていない。
「ん゛んっ! ……麟斗、もう少しで食べ終わるなら、食べてしまいなさい」
「ああ」
説教文句が空打った所為で、迫力もクソもない声を親父は俺へ掛けた。
台詞内容も態々言うまでも無く、俺としても言われるまでもない事なのが、余計に焦りを悟らせる。
残った分も少ないので、俺はさっさと口の中へ掻き込んで、喉を鳴らして呑み込んだ。締めのお茶も青臭く、ドロリとしていて実に不快だった。
何時の間にやら俺の隣まで戻ってきた楓子の手には、あの分厚いノートが握られており、此方を恨めしそうに睨んでいる。
だが迫力がまるでない、親父の日の睨みでも耐える……と言うより鈍感で感じ取れない俺なのだから、彼女のモノなどそよ風にも届かない。
「はい、楓子の分よ」
「ういー、いっただっきまーっす」
茶碗を渡されるや否や、猫背になると猛烈な勢いで食べ始めた。さっさと食べ終えたいらしいが、理由は言うまでも聞くまでもない。
「楓子、麟斗の様にもっと味わって食べないか……折角優子さんがだなぁ」
「別にいいじゃない、味わうなんて。私は元気に食べてくれればそれでいいの」
「しかし……」
「私が味わって食べて欲しいのはぁ……アナタなんだからっ?」
「みみみ見ているといい言っているだろう優子さん!? 麟斗だけじゃなく楓子も!」
窘めようとした親父をお袋がキスをしようとして止め、楓子の出したグーサインに同じくグーサインを返している。
……俺が叱られそうなときは何もしないのだから、やはり不公平だと言わざるを得ない。
顔を真っ赤にした親父は無言で新聞を開き、焦りながら番組欄を読み始めた。如何やら自分は食事中に物を読まない、と言うのを実践しなくても良いらしい。
手本にもならない親である。
「ごちそうさん……と」
それだけ言うと俺は立ち上がり、自分の部屋に帰ろうとするが……
「だべぇがえらばいで! ばだじのぐどうをびでよにいぢゃん!」
「汚ったねぇ……!」
口いっぱいに物を詰めて頬を膨らませたまま喋ったせいで、辺りに米粒
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