10部分:第十章
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っきりと彼女に対して言うのだった。
「貴女と共にいられるのでしたら。死んでもいいです」
「死んでも・・・・・・」
「死を恐れる理由なぞ何処にもないのです」
それが藤次郎の言葉であった。
「一体何を恐れるのです?死なぞ」
「死ぬのが恐くないのですか」
「貴女と共にいられるのなら」
やはりこう述べるのだった。何処までも彼の決意は固かった。
「そんなものは。全く」
「左様ですか」
「はい。ですから」
じっと麗華を見て。もうその目を離すつもりはなかった。
「私は貴女と共にいたいのです」
「それで宜しいのですね?」
麗華はようやく顔を上げた。そうして恐る恐る藤次郎に問うのであった。
「藤次郎様は」
「貴女はどうなのですか?」
藤次郎はその問いに答えずに逆に問い返した。その表情はもう動かなかった。
「貴女は」
「私は」
「私と共にいたいのですね」
「それは・・・・・・」
言葉を偽ろうとする。そうして偽りの言葉を出そうとするがどうしてもそれは出なかった。そうしてそのかわりに出る言葉は一つであった。
「その通りです」
正直な言葉が出るのだった。それが出ることを止めることすらできなかった。もう彼女も自分の心を。偽ることができなくなっていたのだ。
「私も。藤次郎様と」
「それでは。よいのですね」
「貴方さえよければ」
麗華は遂にその言葉を言った。もう自分を偽ることはできなかった。
「御願いします」
「勿論です」
藤次郎の返事も既に決まっていた。そうして。
「一緒に。永遠に」
「はい。永遠に」
二人は手を取り合った。そうしてそのまま洋館の中に消えていく。藤次郎が見つかったのは翌日であった。心配して洋館に来た社長と住職が彼を見たのは二階のベッドの上であった。そこで穏やかな顔をしてあの振袖と袴を抱いて眠っていたのであった。
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