1話 調練
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「新兵しか与えられなかったのだが、こいつは見事だな。これが、ユインの指揮する騎馬隊か。この動きなら、戦場に出すことを考えても良いかもしれん」
「漸く最低限の動きを覚えただけで、まだまだです。この程度では、将軍は満足されないかと思います」
「そうか。しかし、見事だ。新兵ですらこの動きなんだ。強襲されたとき、止められなかった理由も解る気がする。三銃士の一人が来て、何とか凌いだのだから相当なものだった」
「……恐縮です」
横目で、王の方を見た。副官のカイアスと何か話しているようだが、此方からは聞こえない。恐らく、麾下の錬度について話しているのだろう。内容までは解らないが、雰囲気から察するに悪い評価では無かったのだと思う。
「行くぞ。味方とは思うな、討ち破るつもりで矢の様に突っ込むぞ」
「応!」
剣を再び振り上げる。短く麾下に告げ、振り下ろし、駆けた。平野を充分に駆け、勢いを保つ。視界の先には、自らの麾下が見えた。強くなった。そう感じた。まだまだ、鍛錬の余地はあるが、驕りの類などは見えず、皆が皆、油断なく隊列を組み駆けていた。
ぶつかる。右手に持つ槍と、左手に持つ魔を宿す剣を用い、麾下達と打ち合った。鐙に足をかけているが、それでも両手を離すと安定感は落ちた。それ故、足で馬の腹を締め上げる事で、より安定感を出した。馬は根気よく語り掛けながら、調教をすることで、此方の意思をよく理解することができる名馬だった。それは、戦いの中でも変わりなく、此方の行動から、意思を良く察してくれた。
そのまま突破と反転を数回繰り返す。刃と刃をぶつけあい、殺す気でやる調練は、それ自体が過酷であり、一歩間違えれば死に繋がるほどのモノであったが、それでも皆、脱落することなく繰り返すことができた。最初のうちは何人もケガをし、時には再起不能になる者もいたが、今ではそんな者も出る事が無くなっていた。皆、死に繋がる一撃と言うのを肌で感じ、解るようになっていたのである。それ故、致命傷になる程の傷を負う者は居なくなっていたのだ。
「見事なものだ、とても新兵とは思えなかった。あれほど苛烈な調練を行っているとは、正直思わなかったぜ」
麾下に小休止を告げ、野営地に戻ると、王が言った。
「ありがとうございます。ですが、まだまだ鍛える余地はあります。機動力、攻撃力、陣形の習熟度など、どれをとっても精強な騎馬隊とは言えません」
「しかし、一般的な騎馬隊と比べても遜色は無い」
「その程度では精強とは言えません」
本音を隠さず告げる。自身の求める騎馬隊は、この程度のものでは無かった。どのような相手が敵であろうと、押し負ける事は無く、縦横無尽に戦場を駆け抜け、例え竜が相手でも突き崩せる、そんな部隊を目指していた。
「くく、そ
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