1話 調練
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。カイアスには、調練の補足をさせ、自分が実動と言う形であった。
周りを見る。王が居るからだろうか、皆一様に緊張していることが感じ取れた。
「焦る事は無い。現時点で自分にできる事をすればいいのだ。いつも通りの調練をする。行くぞ」
それほど大きな声ではないが、皆に聞こえる程度に声をかけた。それで、僅かにだが緊張がほぐれたようだ。「応!」っと全軍が心を一つにして叫んだ。200名ほどの兵士たちである。戦場で気炎を上げる時に比べれば静かなものだが、それでも相当の声量である。木々が騒めき、鳥たちが羽搏いた。遠くの森から、動物たちの気配が僅かに動くのを感じた。
左手に持つ剣を天に掲げ、右手にもつ槍を水平に構える。それだけで、音もなく、麾下たる兵たちが二列縦隊になった。速いが、遅い。まだまだ満足のいく速さではないが、それでもユン・ガソルの一般的な騎兵と比べても遜色は無くなってきていた。
「行くぞ」
声に出し、左手に持つ剣を、振り下ろした。左手の動きはまだ完璧とは言い難いが、指揮するには問題無いほどまで、動くようになってきていた。義手を用意してくれた王には、いくら感謝しても足りないだろう。
騎馬隊が、歩を進めた。最初はゆっくりと、だが、直ぐに速度が上がり、数舜後には疾駆している。駆けに駆けているのだが、出過ぎていたり遅れている馬は無く、見事に隊列を整えたまま駆ける。やろうと思えば、さらに速度を上げることも可能だが、現状では隊列を整えたまま駆けられるのはこの速度までであった。平均的な騎馬隊と比べれば、僅かに速い。と言ったところだろうか。新兵にしては上出来だが、まだまだ満足できる水準では無かった。
「散開」
声に出し、同時に手に持つ槍を、再び水平に構える。それで、傍らの兵士が音による合図を出し、軍が二つの意思に別れるかのように左右に別れ、二つの纏まりに変化した。その状態で駆けた後、4つ8つとさらに細かく分かれる。最初のころは指示を出す度にもたついていたものだが、今ではそのような事もなく、変幻自在にその陣容を変える事が出来た。此方もまだまだ満足できるほどでは無いが、及第点は与えられる錬度であった。
「集合」
槍を天に掲げ、指示を出す。散開していた部隊がすぐさま集まり、再び全軍で隊列を組んだ。予想より、数秒速い。王が見ているから皆気合が入っているのだと、感じた。
「散開、対陣」
そのまま少しばかり疾駆したのち、再び槍を構え指示を出し、二つに分かれる。そのまま片方の部隊の先頭に立ち剣を掲げ、駆ける。もう一つの部隊は、他のモノに任せ、正反対の方向に駆けた。暫く駆け、ある程度の距離が取れたところで、反転する。見れば、対面にいるもう一つの騎馬隊も、此方に向き始めていた。丁度、左右に軍が解れていると言う格好だった
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