1話 調練
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及第点を出せる動きになってきた頃、奴は唐突に表れた。我が主、ギュランドロス・ヴァスガンその人である。
「予想以上、と言ったところでしょうか。王に対する忠誠は大したもので、よく調練にも耐えます。ユン・ガソルは良い兵士となり得る者がそろっていますね」
「ほう、そりゃよかった。今日は様子を見に来たんだが、その感じだと中々上手く行っているようだな。調練の様子を見て行っても良いか?」
「そのような物ならば、いくらでも。しかし、そのまえに兵士たちが食事をとるのですが、どうしますか?」
軍礼を取り、答えた。
唐突に表れる人である。事前の連絡など一切なかったため、何の準備もしていなかった。尤もこの人がそう言う事で怒るとも思えないが。
腰が軽いと言うか、こう言うところがあるから、配下の者は苦労するんだろうな、と思う。俺は軍人であるが故、そこまで負担にはならないが、文官や軍師などは余計な苦労を背負っていそうである。とは言え、こう言う人物なのだとあきらめざる得ないだろうが。
とりあえず、兵士たちが食事をとっている途中の為、それを中断する訳にもいかないので、王にもどうかと聞いてみる。兵糧など、視察に来た王に出すものでは無いが、他に出せるモノは無い。そもそも調練をしている軍の野営地に、碌なものなどある筈がないのだ。それも王ならばわかっているだろう。何よりもこの人ならば、自分の部下と同じものを食べて、文句を言う訳がないと解っていた。
「おう、貰うぜ! 兵士たちと同じものを頼む」
予想通り、平然と兵士と同じものを頼んだ。寧ろ、何処となく嬉しそうに見える。この方は王だが、戦場にいる方が性に合っているのかもしれない。そう思った。
「如何ですか?」
「ああ、不味いな。不味いが、うちの連中と食う飯ってだけで悪くはないぜ」
尋ねると、そう快活に笑った。どこか、惹かれる笑みである。兵士を家族とみる、そう言うところがノイアス元帥にはなかった魅力なのだろう。
「おい、ユイン。喰わないなら貰うぜ?」
「王よ、流石にそれは品が無いですよ」
「くく、いざと言うときは何でも食う軍属が、何をいまさら」
「ソレに関しては、一切否定できないのが、軍人の悲しい性ですな」
他愛もない話をしつつ、食事をとった。自分以外にも、その辺りにいる兵士を捕まえては声をかける。どこか王らしくない振る舞いだった。だからこそ、誰よりも王らしいのかもしれない。この方を王として良かった。その光景を見て、改めてそう思った。
小休止を終え、訓練を開始した。王であるギュランドロスさまが、離れた場所から、カイアスと共に軍の完成度を見ている。時折、傍に侍るカイアスに、一つ二つ質問をしているようだが、部隊の指揮をする為、離れている自分からは聞き取れない
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