1話 調練
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まだもたつきますが、何れはそれも無くなりましょう。皆、思いの外物覚えが良く、貪欲です」
「そうか。ならば暫く、任せるぞ」
「はい」
副官に調練の指揮を任せ、自身は愛馬となる馬に向かう。そのまま少し声をかけ、鐙に足をかけ、その背に乗った。そのまま手綱を取り、ゆっくりと駆けだす。暫し、ゆったりと駆け続けた後、順を置いて速度を上げていく。やがて、速度も高まり、疾駆しているのと同程度の速さになった。そのままさらに速度を上げ、調練中の部隊の前方にでた。
「カイアス! そのまま疾駆!」
駆けながら叫んだ。こちらの意思を汲み取ったのだろう、新兵をそのまま指揮し、此方に向かって突っ込んでくる。数の圧力が、生半可では無かった。こちらはたった一人であり、向うは200人程度である。だが、烏合の衆であった。今もまだ、俺の意図に気付かず、ただ駆けている。
訓練用の剣を抜く。刃はつぶれていた。そのまま突っ込んだ。
「ぐ、あぁぁぁ!!」
すれ違い様に油断していた二列の兵士を可能な限り撃ち落とした。油断していた者たちは、悲鳴を上げ、馬上から落ちた。悲鳴が上がり、瞬く間に恐慌状態に陥る。カイアスの周り以外は、隊列が見事に崩れていた。それを横目に駆け抜け、再び全軍の前に立った。
「今のが、馬上で攻撃されると言う事だ!!」
カイアスが叫んでいた。事前に知らせずに仕掛けたが、此方の意を理解して兵に何も伝えなかったようである。それ故、何の警戒もしていない騎馬隊を良いように乱すことができた。
「今のお前たちでは、将軍ただ一人にすら一角を簡単に崩される。このような体たらくでは、使い物にならん! これより先の調練では、一切油断するな。油断は死に繋がると思え!」
「はい!」
どこか、弛緩していた雰囲気が消えた。調練に慣れた。そこから来る弛みを打ち消したのである。これで、より強い兵ができる。兵士たちの間に漂う雰囲気を見て、そう思った。
左手の調子も、上々だった。まだまだ完璧には程遠いが、以前に比べれば遥かに思ったような動きができ、手綱を操ることができた。ただ、駆けるだけならば、充分に可能だった。このままいけば、何れは両手に武器を持って駆ける事もできるだろう。まだ先の話だが、自由に指揮できるようになる、と言う確信は既に持っていた。ようやく、動ける。そう思った。
「今日から私も直接調練に加わる。今までの訓練とは、同じと思うな。死をも、覚悟しておけ」
「はい!」
兵たちの前でそう告げる。先ほどの交錯が、功を成したのだろう。新兵たちから雄叫びの如き声が上がった。お前たちを精鋭に仕上げる。そう、宣言し、調練を開始した。
「おう、ユイン。上手くやっているか?」
調練に明け暮れ、ようやく騎馬隊として
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