1話 調練
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、様々な事を話し合っていたが、一区切りがついたので麾下たちの方へ向かっていった。それをただ、見送る。本来ならば、俺も直接調練に加わり、兵士を鍛え上げなければならないのだが、直ぐには無理だった。
「中々、難しいモノだな」
左手が無かったのだ。先の敗戦で受けた傷が広がり、戦場であったがゆえに、切断しなければいけないほどになっていたのである。意識を取り戻した時には、既に手首から先が無かった。流石にどうしたものかと思ったが、王は既に手は打っていたようで、義手を用意してくれていた。特殊な、義手だった。使用者の魔力を用い、動かす。大雑把にいえばそう言うモノだった。傷もまだ癒えていないが、まずはこの義手を使いこなすのが最優先だった。
「っと、すまない。痛かったか?」
馬上で、実際に手綱を引いてみる。左手があった時と比べ、力加減が思うようにいかず、馬に痛みを与えてしまった。僅かに頭を引いた。それだけで随分と嫌がっていることが理解できた。即座に力を緩め、馬を楽にする。
「すまない。まだコレに慣れないうちは、何度かあるかもしれないが、我慢してくれるとありがたい」
一度馬から降り、その毛並みを撫でながら呟く。馬自体は、素晴らしい馬であった。ノイアス元帥に仕えていたころの馬と比べると、良く駆け、良く耐える。疾駆したときの速度など、他の追随を許さない。そんな名馬と言っても良いような馬だった。その馬が、手綱を引かれていやがったのである。つまりは、自身の手綱捌きに問題があったと言う事である。
原因はすぐに分かった。義手、である。単純に、まだ慣れてはいないのだ。それ故、馬にはすぐに伝わったのである。名馬であるがゆえに、手綱には厳しかった。
「まずは焦らず、慣れる事か」
呟く。原因は良く解っている。慣れなのだ。それは様々な事を行い、手の動かし方を経験するしかなかった。繊細な動きをするにはまだ暫くかかるかもしれない。そう思うと、自分の不甲斐なさにため息が零れた。
とは言え、自分は指揮官なのだ。本格的な調練を行うまでには、何としても以前の水準を取り戻す必要があった。指揮官が水準以下となっては、兵の錬度に大きくかかわるのだ。しばらくは副官に任せるつもりであるが、できる限り早く仕上げなくては。そう、思った。
調練をはじめ、1週間がたった。今では形としては、騎馬隊の格好ができるようになっていた。突出しすぎる者は無く、皆足並みを揃え駆けている。そこから、暫く駆け、不意に二つに隊を別け、その後四つの隊に別れる指示を出す。一瞬、足並みが止まりかけるも、何とか隊列を組み直した。まだ、咄嗟の指示に迅速に従う事はできない。だが、新兵にしては及第点と言ったところであった。
「調練は進んでいるようだな」
「はい。今は
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