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短編集
まっしろ男とまっくろ女
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た。この関係の終わりの事を。寂しさの次にある事を。
「なぁ、お前はいつまでここにいるんだ?」
 私の言葉はともすれば拒絶と取れる。だから私は言葉を重ねた。これは選択ではない。一つの可能性の質問だと彼女にわかってもらうために。
「今すぐ出て行けとか、お前に不満があるとかじゃない。お前が望む限りお前はここに居ていい。だが、例えば今から十年二十年先までこうしていることはできないだろう?」
 十年二十年先にまでは、確実に雇用主と家政婦という関係は破綻してしまっているのだから。
 少女は口を閉ざす。そんなところまで考えが至っていなかったのか、それとも思っていることを口に出すことが憚られるのかはわからない。
「お前はいつかはここを出て普通に暮らすべきだ」
「分かっています。近い将来、私は貴方の元を離れます。ですがそれまでは自身の責務を全うします」
 そう口にして、彼女は私の部屋を出る際にいつもより強めに襖を閉めた。


 朝、一人目が覚める。私は立ち上がり布団の側に置いてある百日紅ひゃくじつこうでできた長さ四尺程の棒を握って部屋を出た。
「あら、旦那様どうされました」
 流しのほうから彼女の声がする。今は朝食を作っているのだろうか。
「散歩。すぐに戻るよ」
「その棒は一体」
「サルスベリの棒。最近物騒な噂をよく聞くからね。護身用だよ」
 私の言葉に彼女は小さな笑い声を上げた。
「旦那様が捕まってしまいますよ」
 私は苦笑いを浮かべて、玄関から外へ出た。そうしてアパートの階段へと向かい、踊り場でぼぅっと立って時が過ぎるのを待った。風は乾燥していて、時たま鶯の声が聞こえた。今日一日はとても天気が良いことだろう。私はまた自宅を目指して玄関を通り、自室に戻って彼女が朝食を運んでくることを待った。

 そうして、その日の昼間、事件は起こった。

「旦那様、お願いです。今日の昼間だけでいいです。一緒に食事を取らせてもらえないでしょうか」
 そう懇願する彼女に私は首をふる。彼女の前で私が何かをすることはできない。
「私はとてもゆっくり食事を摂るし、例え家政婦と言っても女性だからね。あんまり男性にそういう事を言うものではないよ」
「気持ちのよい日です。窓を開けてのんびり食べませんか? 以前はそうしていたではありませんか。今日、今日だけでいいのです。お願いします」
 何故、今日に拘るのだろうか。今日は、確か六月の……二十二日、夏至だったか。それもよく晴れたいい天気の。私にとっては最悪の天気の。
「今日は、駄目だ」
 もし彼女と共に食事を摂るとしてもとしても、今日は特に駄目だ。
 彼女は私の部屋を駆け足で出て行った。彼女を何がそんなに急かすのか、それはわからない。ただそれでも、私は彼女の前では何もできない。

 彼女の去った自
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