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兎の決意
3部分:第三章

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第三章

「僕が。もう?」
「うん、やってるよ」
「このお家に生まれた時からね」
「してるから」
「このままでいいんだよ」
「このままって」
 三郎はその言葉にまた考えました。
「僕何かしてたかな」
「僕達もしてるよ」
「ちゃんとね」
 一郎と二郎もだというのです。
「しっかりとしてるから」
「三匹共ね」
「一体何をしているのかな」
 三郎にとっては話を聞けば聞く程わからないことでした。
「僕って絢子ちゃんの為に」
「絢子ちゃん僕達見たら笑顔になるじゃない」
「お父さんもお母さんもね」
 二匹はここでこう三郎に話すのでした。
「それだよ」
「それなんだよ」
「笑顔って」
 三郎はそれを聞いてまたいぶかしむ顔になりました。
「確かに笑顔になってくれるけれどそれだけでいいのかな」
「笑顔になるって凄いことなんだよ」
「そうだよ。嬉しいから笑顔になるんだよ」
 二匹はいぶかしみ続ける兄弟にさらに話します。
「僕達を見て撫でて可愛がって笑顔になってくれる」
「それで絢子ちゃんの為になってるんだよ」
「そうなんだよ」
「そうだったんだ」
 ここでやっと納得するようなものを感じだしてきた三郎でした。
「僕達って絢子ちゃんを笑顔にすることで役に立ってたんだ」
「そうそう。絢子ちゃんがどんなに悲しい顔をしていても僕達を見ればね」
「笑顔になってくれるじゃない」
「そういうことだよ」
「わかったかな」
 これが二匹の言葉でした。
「僕達は僕達で絢子ちゃんの為になってるんだよ」
「確かに絢子ちゃんを守ることはできないよ」
 それは無理だというのです。
「僕達は小さいし力も弱いし」
「戦えないしね」
「それは無理なんだ」
「けれど絢子ちゃんを笑顔にできる」
「それはできるんだよ」
 守れなくても。それはだというのです。
「だからそれでいいじゃない」
「できることをしようよ、全力でね」
「そう。それだったら」
 ここまで聞いてです。三郎もやっと頷くのでした。
「僕決めたよ」
「どうするんだい、それで」
「これからは」
「いつも頑張って絢子ちゃんを笑顔にするよ」
 こう言うのでした。
「それが僕にできることならね」
「よし、じゃあいいね」
「そうしよう」
 二匹も彼の言葉に頷いてでした。
 そうして三匹はずっと絢子を笑顔にするのでした。彼女がどれだけ怒っていても悲しくても寂しくてもです。そうして彼女を助けるのでした。それが三郎の決意で彼はそれを見事に果たしたのです。


兎の決意   完


                   2010・8・28

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