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だ……うぅ、本格的に足がブルブル震えてきた。
か…帰りたい。 帰る所無いけど…。
―――その時、兵士が開ける前に向こう側からドアが開かれた。
「ん」
ドアの向こうから出てきたのは、小さく整えられたヒゲをさせた男性だった。
上下揃って小ざっぱりとした服装だけど、豪華さは無いため庶民だと思われる。
その人は兵士に会釈し、部屋の中にいる人に別れの挨拶代わりに三つ指を立てた片手を振った。
誰だろう今の人?
自分には特に挨拶するでもなくすれ違って行ったけど、偉い人…じゃなさそうだけど…。
「そこに誰かいるのか?」
「ハッ! 勾留されてた傭兵を一名お連れしました!」
…って、それどころじゃない。
今しがたすれ違った人の事を考えるよりも、まずは自分の事が先である。
伯爵に拒否権のない面会を求められている今、自分の首には縛り首の縄がかかっているような状況なのだ。
こ…ここから先は、処刑台へ上がる階段となるか否かのポイント…!
「そうか、御苦労。 君、入りたまえ」
聞き覚えのある声だった
そして凄く威厳があるような落ち着いた声だった。
最近どこかで…そう、尋問室の前で聞いたような初老の男性の声…それが目の前にいる人、エンリコ・ヴェルター・ファーン伯爵であった。
一目見てわかる…この人は、偉い人だ!
常日頃から何か責任を負っている事を日常としている、経験に経験を重ねた者の顔付き。
日々生きる事に精一杯の人間とは違う、立派な“やんごとなきお方”という奴だ。
ギクシャクと、言われるがままに部屋の中に入る。
それを見届けた兵士は、姿勢を正して中にいる伯爵に敬礼した。
「ではっ、失礼します」
ど……どどどうしよう、どうしよう、どうしよう…!
パタンと後ろでドアが閉められて、この伯爵と完全に二人きりとなった。
この場が密室となってしまった事で、自分の小市民的なハートの緊張はピークに達した。
や……やられる前に、やらなければっ―――!
「よく来てくれたな。 まずは…」
「ご、ごめんなさいいぃぃぃ!」
恥も外聞も捨てて、全力で土下座をしてみせた。
もう、命乞い全開である。
貴族の気まぐれにやられるくらいなら、こちらから先にひたすら謝る。
「っ!?」
「身に覚えはないけど、悪気はこれっぽっちもないんですぅー!」
何か言おうとしても言葉一つで間違えるくらいなら、傭兵であっても庶民並の存在にすぎない。
こうして必死に命乞いをして哀れんで許してもら
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