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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
02
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…もはや悪名じみている。

『…で? お前の勘ではどう思う?』
『白、だな……これを黒だと思う方がどうかしてる。 と言うか、餓死(がし)しそうになってたって言うじゃないか? 餓死(がし)しそうになるスパイがどこにいる』

 スパイじゃないけど、ここにいます…餓死しそうになった傭兵がここにいます……。
 おかしいな…今、スパイの疑いが消えたような会話をしてたのに…嬉しい会話のはずなのに…どうしてこんなにも心が痛いんだろう…。

 泣いていいですか…? もう泣きそうです…。

「シクシク……」

 はい…もう、泣いてます。

『……聞こえるか』
『ああ、聞こえるな…』

 扉一枚(へだ)てて、尋問室(じんもんしつ)で一人寂しく(すす)り泣く。
 それが狭い部屋に反響するものだから、扉向こうにいるお二人さんにも聞こえただろう。
 それを気を悪くしたのか、話の邪魔をしたのか……二人が遠ざかっていく足音が聞こえ、精神的にボッコボコにされた自分は…しばらく扉の前でしょっぱい水たまりを作っていた。

 シクシク……。


―――。


 涙を流して心の痛みを癒やした頃、待ちに待ったその一言をかけられた。

「釈放だ」

 一人の兵士がやってきて、薄暗い尋問室(じんもんしつ)を開けて第一声がそれだった。
 自分の(もろ)いハートの悲しみは癒えて、その一言に表情が明るくなった。

 いきなり拘束されてスパイの疑いをかけられたけど、そんな事も気にせず現金(ちゃっかり)なものではある。
 このままどうなるかと思ったけど、解放されるのなら文句などない。

 それに…お腹が未だに空腹を訴えているから、出来ればすぐに食事を取ろうと思う。 うん、そうしよう。


 ―――しかし、その予定はあっさりと見送る事となる。

「釈放の手続きはないが…領主であるエンリコ・W・ファーン伯爵が面会を求めている」

 兵士は淡々とそう言った。

 最初に思ったのは、ちょっと長い名前だなぁ、だった。
 次に思ったのは、それは上から何番目に偉い人なんだろう、だった。

 そして最後に思ったのは―――…えっ、僕そんな偉い人と会う事になってるの?だった。

 一拍おいて、驚きのあまり絶叫(ひめい)のような疑問が飛び出た。

「え……ええぇぇええっ!? は、ははは、伯爵ぅっ!?」

 そんなお偉いさんが僕と面会!?
 一体なぜっ!?

 疑いが晴れた、みたいな会話を聞いた気がするけど…しがない傭兵でしかない自分に、伯爵が何の用なのか?
 今さっき、釈放の手続きは無い、と言ったけど…それはつまり、処刑するから手続きなんていらないのだからって意味じゃ…。
 あ、ありえる…あり
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