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…もはや悪名じみている。
『…で? お前の勘ではどう思う?』
『白、だな……これを黒だと思う方がどうかしてる。 と言うか、餓死しそうになってたって言うじゃないか? 餓死しそうになるスパイがどこにいる』
スパイじゃないけど、ここにいます…餓死しそうになった傭兵がここにいます……。
おかしいな…今、スパイの疑いが消えたような会話をしてたのに…嬉しい会話のはずなのに…どうしてこんなにも心が痛いんだろう…。
泣いていいですか…? もう泣きそうです…。
「シクシク……」
はい…もう、泣いてます。
『……聞こえるか』
『ああ、聞こえるな…』
扉一枚隔てて、尋問室で一人寂しく啜り泣く。
それが狭い部屋に反響するものだから、扉向こうにいるお二人さんにも聞こえただろう。
それを気を悪くしたのか、話の邪魔をしたのか……二人が遠ざかっていく足音が聞こえ、精神的にボッコボコにされた自分は…しばらく扉の前でしょっぱい水たまりを作っていた。
シクシク……。
―――。
涙を流して心の痛みを癒やした頃、待ちに待ったその一言をかけられた。
「釈放だ」
一人の兵士がやってきて、薄暗い尋問室を開けて第一声がそれだった。
自分の脆いハートの悲しみは癒えて、その一言に表情が明るくなった。
いきなり拘束されてスパイの疑いをかけられたけど、そんな事も気にせず現金なものではある。
このままどうなるかと思ったけど、解放されるのなら文句などない。
それに…お腹が未だに空腹を訴えているから、出来ればすぐに食事を取ろうと思う。 うん、そうしよう。
―――しかし、その予定はあっさりと見送る事となる。
「釈放の手続きはないが…領主であるエンリコ・W・ファーン伯爵が面会を求めている」
兵士は淡々とそう言った。
最初に思ったのは、ちょっと長い名前だなぁ、だった。
次に思ったのは、それは上から何番目に偉い人なんだろう、だった。
そして最後に思ったのは―――…えっ、僕そんな偉い人と会う事になってるの?だった。
一拍おいて、驚きのあまり絶叫のような疑問が飛び出た。
「え……ええぇぇええっ!? は、ははは、伯爵ぅっ!?」
そんなお偉いさんが僕と面会!?
一体なぜっ!?
疑いが晴れた、みたいな会話を聞いた気がするけど…しがない傭兵でしかない自分に、伯爵が何の用なのか?
今さっき、釈放の手続きは無い、と言ったけど…それはつまり、処刑するから手続きなんていらないのだからって意味じゃ…。
あ、ありえる…あり
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