2部分:第二章
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第二章
「絢子ちゃんの為だから」
「絢子ちゃんの為なら何でも」
「そうするんだ」
「うん、そうするよ」
こうしてでした。彼はさらに走ってもりもりと食べます。けれどそれをしても動きが速くなるだけでした。強くなったという感覚はありません。
それでです。三郎もこのことを不思議に思いました。
「あれ?」
「強くなってない?」
「若しかして」
「そうみたいなんだけれど」
困惑した面持ちで兄弟に答えます。
「どうしてなのかな」
「やっぱり兎だからじゃないの?」
「やっぱり」
二匹はその原因をまた自分達自身に求めます。
「それでなんじゃないかな」
「僕達兎なんだから」
「兎だからってどうしてなんだよ」
三郎は兄弟達の言葉にをの丸い目を少し怒らせて言い返します。
「兎は強くならないっていうのかい?」
「だってねえ。兎だし」
「兎だとね」
「強くなるのはね」
「ちょっとないんじゃないかな」
一郎と二郎はここでこう話すのでした。
「大体僕達って敵が来たら逃げるじゃない」
「それか隠れるか」
「それで強くなるってな」
「ないんじゃないかな」
「それはないよ」
三郎はです。このことはどうしても認めようとはしませんでした。それで少し意固地な調子になってです。兄弟達に言い返します。
「絶対にね」
「絶対にって言うけれど」
「兎は兎だしね」
「そうだよね」
「強くなるのは無理だよ」
それでも二匹は言います。ですがそれでもです。三郎はあくまで餌をもりもりと食べ走り続けます。そんなことを続けていたある日のことです。
走った後で休憩して部屋の隅で寝転がっている三郎のところにです。その絢子が来ました。そうしてそのうえで彼のそのふわふわの毛を撫でながら話してきました。
「そこまで走ってどうしたのかしら」
(絢子ちゃんを守る為だよ)
三郎も言います。しかしこの言葉は兎の言葉なので絢子にはわかりません。
(それでなんだよ)
「そんなに逃げる練習しなくていいのよ」
(逃げる練習じゃなくて鍛えてるんだよ)
「だってね」
(だって?)
「私がいるから」
こう三郎に笑顔で言うのでした。
「私が守るからね、三郎は」
(えっ、守る!?)
三郎はその言葉を聞いてです。思わず言ってしまいました。しかしそれでもです。兎の言葉なので絢子にはわからないのでした。
(あの、僕が絢子ちゃんを守るんだけれど)
「一郎も二郎もね」
けれど三郎の言葉がわからない絢子はです。さらに言います。
「私が守ってあげるから。お父さんもお母さんもいるし
(じゃあ僕は何をしたらいいんだろう)
三郎は素朴にこう思いました。
(一体)
三郎はこのことを真剣に考えました。ですが。
考えても考え
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