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夕鶴
2部分:第二章
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「はい、暫くの間」
 二人は言葉を重ねます。自然と心もそれに重なっていっていたのですがまだその自覚はありませんでした。それでもお互いに言い合うのでした。
「御願いします」
「こちらこそ」 
 こうして雪が止むまでの間よひょうの家に留まったのですがそれが次第に長くなり気付いた時には。二人は夫婦になって静かに、ですが幸せに暮らしだしたのでした。このことはすぐに村中の評判になりました。
「あのよひょうが遂にか」
「しかもあんな奇麗なかみさんをな」
 皆羨ましいなり嬉しいなりでした。よひょうのことは皆知っていましたので心から祝ってくれています。よひょうはそのことに気持ちをよくしていてつうといつも仲良く暮らしていました。つうはそんなよひょうと一緒に畑仕事をしたり彼に蕎麦掻を作って食べさせてあげたりして。時には機を織ってそれで反物を作ってあげたりしていました。この反物がまたえらく評判だったのです。
「つうさんはな」
「全くだ」
 村の人達は口々に言います。
「こんな反物を織れる人なんていないよ」
「どうしたものだか」
「いや、つうは凄いだろう」
 よひょうも自分のことではないのに皆にほくほくとした顔で自慢しています。
「こんな反物を織れるのは他にはいないだろ」
「それ、高く売れるだろう」
「まあな」
 よひょうはあまりお金は欲しがらないのですがそれでもつうの反物が評判になるのは嬉しいのです。そのことを素直に喜んでいたのです。

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