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第一章
夕鶴
東北のある村によひょうという若者がいました。
家は貧しく一人身で風采も冴えませんでしたが真面目で素朴で気のいい親切な若者でした。彼がある雪の日仕事を終えて家に帰る途中。一羽の鶴が罠にかかっているのを見ました。
「こんなところに罠が」
村の誰もここに罠なんかかけないのにおかしいなと思いました。それでも実際に鶴は困っていました。右足を捕まえられて何としようとしていますができないでいたのです。
そんな鶴を見て可哀想に思ったよひょうは鶴を助けてあげることにしました。それで鶴に近寄ってその罠を外してあげたのでした。
「随分と古い罠だな」
その罠を見て最初に思ったのはこれでした。
「誰かが前に仕掛けて忘れていたんだな。けれどこれで大丈夫だ」
罠を外してから雪で一応血をぬぐってあげました。それから鶴に対して優しい声をかけます。
「もうこんな罠にかかるんじゃないぞ」
こう言って鶴を放してあげました。鶴は暫くよひょうを見た後で天に飛び去りました。よひょうはそれを見届けてから家に帰りました。それから数日後のことです。
家の中で草履を編んでいたよひょうのところに。扉を叩く音がしました。
「おやっ、誰かな」
その音に気付いて扉を開けます。すると白い服に黒い髪を持つ色の白い女の人がいました。歳はよひょうと同じ位でしょうか。静かな顔でそこに立っていました。
「あの」
「あっ、はい」
ついついその女の人に見惚れていたよひょうは慌てて女の人に言葉を返しました。
「何でしょうか」
「旅の者です」
「旅のですか」
「はい」
よひょうに対してこくりと頷きます。頷いたその首はながくまた実に奇麗な首でした。よく見ればその手に傘や旅道具を持っています。
「道に迷いまして」
「こんな雪の日にですか」
「そうなのです」
またよひょうに対してこくりと頷くのでした。
「それで。宜しければここに泊めて頂けるでしょうか」
「ここにですか」
「いけませんか?」
その白い顔でよひょうに尋ねるのです。
「宜しければ」
「ええ、どうぞ」
よひょうは女の人のその言葉を断るでもなく笑顔で受け入れるのでした。
「こんな雪の中に一人では。外に出たら危ないです」
「よいのですね」
「ええ」
よひょうはまた頷くのでした。
「さあ、早くあがって」
そのうえで中に入るように勧めます。家の中に。
「丁度火鉢もつけてありますし」
「有り難うございます」
こうして女の人はよひょうの家にあがりました。家にあがるとよひょうと女の人はあれこれと話をしました。話によると女の人の名前はつうといって生まれはよひょうのいる国よりまだ北でした。何でも南に下るつもりが道に迷った
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