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夕鶴
1部分:第一章
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とのことです。
 しかも。つうには身寄りがないこともわかりました。
「ではお一人ですか」
「そうです。あなたは」
「おらもですよ」
 よひょうは照れ臭そうに笑ってつうに答えるのでした。
「いや、この歳になってお恥ずかしいことですが」
「左様ですか」
「ええ。それでですね」
 恥ずかしそうにまた話すのです。
「相手を探しているのですが。どうにも」
「わかりました。それでですね」
 つうはここで話すのでした。
「今晩泊めて頂く御礼がしたいのですが」
「御礼ですか」
「そうです」
 またよひょうに述べます。
「実は。機を織ることができまして」
「機を」
「はい。それでお返しをしたいのです」
 おずおずとよひょうに話すのでした。
「それでは駄目でしょうか」
「いえ、そんなことまで」
 しかしよひょうはそれを断るのですか。
「いいです。そこまで」
「いいんですか?」
「ここには糸でいいのがないですし」
「糸は別に」
「いえ、それでもです」
 言葉は柔らかいですがどうしてもといった感じです。つうを気遣ったものなのがわかります。

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