3部分:第三章
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第三章
「不安だったけれど」
「これでどうにかなったらそれまでなんだよ」
お父さんの今の言葉は厳しいものでした。
「泳げなかったらね」
「それまでなのね」
「必死にやれば何でもできるんだ」
そして今度はこうも言うのでした。
「何でもね」
「泳ぐのもね」
「だからコロ助をお池に突き飛ばしたんだ」
コロ助をお池に突き入れたのはお父さんでした。そしてそのうえでお母さんと一緒に姿を隠したのです。そういうことだったのです。
「あえてね」
「それでだったの」
「大丈夫だと思っていたよ」
お父さんは身体を震わせてそのうえで水を飛ばすコロ助を見ていました。
「コロ助ならね。運動神経はいいから」
「それでも心配だったのね」
お母さんは不意に笑顔を浮かべてお父さんに言ってきました。
「お父さんも」
「えっ!?」
「いざっていう時は助けに行くつもりだったんでしょう?」
また笑ってお父さんに言いました。
「そうでしょ?実は」
「それは」
「ずっと顔に出てたわよ」
お父さんの顔も見ていたのです。
「顔にね。今にも飛び出そうか飛び出そうかって顔になって」
「わかっていたんだ」
「親だから」
わかった理由はそれでした。
「だからわかったのよ」
「お母さんも心配だったんだろ?」
「ええ」
それはお母さんも同じでした。
「やっぱり。何かあったら」
「けれどコロ助はやれた」
結果はそうでした。いいことに。
「必死にやってね」
「コロ助も頑張ったのね」
身体の水を飛ばしてから立ち上がっています。まだとても苦しそうな顔ですけれど。
「必死にやって」
「さて、そろそろ出ようか」
お父さんは今度はこうお母さんに声をかけてきました。
「コロ助を迎えにね」
「ええ。じゃあ」
「今晩は御馳走にしよう」
お父さんは二人並んで歩きながらお母さんに話してきました。
「コロ助が頑張ったんだから」
「さあ、コロ助の身体をちゃんと拭いて」
お母さんも言います。
「それから。本当に遊園地に行ってね」
「御馳走をね」
「頑張ったコロ助の為にね」
お父さんもお母さんも満面の笑顔でコロ助の前に戻りました。それから遊園地に行って御馳走をコロ助の為に作ってあげるのでした。必死にやって泳げるようになった彼の為に。
必死にやれば 完
2009・2・24
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