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逆さの砂時計
解かれる結び目 14
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 大切なものを奪い取られたこの場所で。
 レゾネクトに体を開かれていたのか。
 あられもない醜態を晒し、強制的に与えられる熱で喘いで。
 何度も何度も掻き乱されて。

「アルフ……リード……」

 侵されて犯された、自分の物とは思えない体を抱えて横向きに縮こまる。
 レゾネクトの冷え切った熱が、体の中で渦を巻いているみたいだ。
 好き勝手にされすぎて、もう、気持ち悪いとさえ思わなくなってる。
 それが悔しくて、苦しくて……虚しい。

 ねえ、アルフ。
 生きて、それでどうなるの?

 神々の力では、レゾネクトを殺せなかった。
 どれだけ挑んでも、全然届かない。まるで効かないのよ。
 もしもこの先、いつかレゾネクトを殺せたとしても。
 私はこの空間から出られない。

 たった一人で生きて、それでどうなるっていうの?
 貴方がいない世界で。
 護りたいものが一つもない、こんな虚無の空間で。
 生きていたって、苦痛なだけよ。

「……もう、……いや……」

 これ以上、レゾネクトに犯されながら生き続けるくらいなら。
 たった一人で存在し続けるくらいなら。

「アルフ……。もう、死なせて……。お願い……」

 貴方の剣で。貴方の力で。
 汚れた私を、存在ごと消して。
 心だけでも、貴方の傍に居させて。

「……アルフリード……。私を、赦して……」

 近くに落ちていた剣を手探りで見つけ、右手で柄を、左手で剣身を握る。
 上半身をひねり起こして床に座り、切っ先を自分の腹部に向けた。

 …………静かだ。
 涙は流れるけれど。
 これで終わると思えば、悲しみも怒りも憎しみも、絶望もなくなる。

 私の体はもう、悪魔の汚れで満たされている。
 神々の力でならきっと、一突きで解放してくれるだろう。

 もう、いい。
 初めから……アルフを喪ったあの瞬間に、こうしていれば良かったんだ。
 これで、終われる。

「さよなら」

 誰にともなく告げて。
 『退魔』の刃を、ためらいなく体に突き立てる。

 痛みはほんの一瞬。
 ずきっ、と小さく感じただけで。

「…………あ?」

 腹部を貫いた筈の剣身が、消えた。

 腹部と左手にほんの少し付いた傷は、『治癒』の力で修復、再生され。
 残ったのは、右手で握っている柄のみ。

 …………うそ、でしょう?
 体に傷一つ残してくれなかったばかりか。
 唯一の武器だったアルフリードの剣が、消えてしまった。
 これじゃ死ねないし、レゾネクトを殺す手段も皆無になってしまう!

「や……いや! いやぁあ!! これ以上生きていたくないの! 殺して!! お願いだから、私を殺してよおおぉお!!」


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